ベビーパウダー山崎

WILD LIFEのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

WILD LIFE(1997年製作の映画)
3.0
全編なにかしらの模倣ではあるのだけど、それでも映画の幅みたいなものは懸命に広げようとはしている。当時の黒沢清(なぜかサングラス掛けて出演しているが)映画と比較されるのはしょうがないとしても、黒沢清より人間を映そうとはしていて、その役者への熱き思いは青山真治ならでは。少なくても女性の役者を映すのは黒沢清より遥かにうまい。
神代辰巳的に、あえて薄っぺらで飄々とした「喜劇」として暴力や死を扱っているが、「おふさげ」には決してさせないという気難しさ。物語と言うより断片的な設定(くだり)を繋げて形にしていくので、進み出したと思ったら堰き止められるの繰り返し。この「ぎこちなさ」は青山真治映画の特徴だと思うが、その不器用さは天然だったのか、それともこのゴツゴツとした塊の積み重ねこそが映画だと信念があったのか…。
初期の頃からどの作品も、「映画」と「作家(性)」どちらが勝つか?の勝負を挑んでいた志の高い監督ではあったと思う。そして、つねに映画に負けて酒を飲んでいたのではないかとも思う。
そういえば『宝ヶ池の沈まぬ亀Ⅱ ある映画作家の日記2020‒2022』をまだ買ってないな。金入ったらそのうち買います。