あんがすざろっく

コクーンのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

コクーン(1985年製作の映画)
5.0
20歳過ぎまで、実家で祖父母と暮らしてました。
うちは本家だったので、正月は親戚が大勢集まり、それはそれは賑やかな三が日でした。お年玉もたくさん貰えるしね。

僕が小さい頃の実家は、築何十年の木造二階建てだったんですけど、階段が急でね、画家だった祖父の仕事部屋が二階にあったんですよ。
僕はまだ階段なんか昇れない時分で、安全の為に階段前に柵がしてあって、夕飯時になると階下から
「じいちゃん、がん(ご飯)よ〜」って叫んでたのを覚えてます。
で、ある日、その柵を外して、階段をよじ昇り、祖父を二階まで呼びに行ったんです。
祖父はびっくりしたでしょうね〜。
多分、僕が初めて階段を昇った記憶。
覚えてるもんですね…

夜怖い夢を見ると、祖父母の布団に潜り込んで寝たり。
思い返すと、結構じいちゃんばあちゃんっ子だったんだな。

同い年の友達とかより、目上の人とか、おじいちゃんおばあちゃんと話す方が好きだった僕、今自分が介護の仕事をしてるのも、小さい頃からの生い立ちがうまく作用しているのかも知れません。



1985年公開の「コクーン」は、おじいちゃんおばあちゃん達が主役のハリウッド映画。
老人ホームで過ごす彼らの隣の別荘に、ある一家が引っ越してくる。
お年寄り達と、ミステリアスな隣人との交流を描いています。

と、これだけ書くと、人生の終盤にさしかかった老人達の姿をリリカルに描いたドラマだと思われるかも知れません。
ですが、この隣人一家、実はアンタレア星から来た異星人。
大昔に地球に置き去りにしてきた仲間を救う為、再び地球に戻ってきたのです。

異星人とは言え大変温厚で、人間の姿を借りて、お年寄り達ともコミュニケーションを取ります。

お年寄り達は最初こそどこにでもいるような普通のご老人と一緒。
しかし、アンタレア星人と交流し、彼らの仲間の繭(コクーン)からエネルギーを分け与えてもらうことで、身体の中にみるみる活力が溢れ出し、まるで若返ったようにアクティブに。
青春時代を取り戻すかのように、クラブや浜辺へ繰り出し、周りの若者達をも驚かせる華麗な動きを見せます。
しかし、コクーンには秘密があって…



主演のウィルフォード・プリムリー、ドン・アメチー、ヒューム・クローニン、ジェシカ・タンディら、往年の名優が見事な演技で魅せてくれます(夫婦役を演じたクローニンとタンディは、実生活でも夫婦でした)。
彼らの全盛期というか、活躍していた時代を知らないのですが、ずっとご覧になってこられたファンの方には、きっと感慨深いものがあったのでしょうか。
今で言えばデ・ニーロやモーガン・フリーマン、アンソニー・ホプキンスら名優達が、歳相応の役柄を演じる、味わい深い作品を見れるようになってきた気持ちと同じだと思います。

貫禄のブライアン・デネヒーや、スティーブ・グッテンバーグ、ターニー・ウェルチら若手スターの活躍も見所。特にウェルチのセクシーな魅力がたまりません。
また、「ネバーエンディング・ストーリー」でバスチアンを演じたバレット・オリヴァーが、おじいちゃんっ子の少年を演じていて、これが泣かせてくれるんです…
特に釣りのシーンで大号泣。



監督はロン・ハワード。
きっと映画ファンの方なら、この人の作品を見たことがあるはず。
例えて言えば、スピルバーグが監督した作品がそれだけで話題になり、映画好きな人でなくても知られているのに対し、ハワードはその名前を前面には押し出さない。
内容だけ見て面白そう‼️と思って、監督を見たらロン・ハワードだった‼️ということもよくあります😊
人間ドラマからコメディ、SF、サスペンスと、どれを撮ってもしっかりエンタメに仕上げるその手腕。
正に映画職人。
本作でも異星人との交流(多分おじいちゃん達の驚異的な身体能力も)を、特殊効果を駆使して描いており、ヒューマンドラマとSFファンタジーがしっかり両立されています。


歳を取っても若々しくいたい、これは男女国籍問
わず、誰でも一緒なんだと思います。
老いと死、夫婦や家族のあるべき姿、自分らしさとは何か。


映画のラスト、大人達に混ざるデヴィッド少年だけが、唯一ニッコリと笑顔を見せます。
これって、大好きなおじいちゃんの話を信じる少年のファンタジーだったんじゃないかな。

この後パート2も製作され、どうもそちらの方は評価が高くありませんが(SF色が薄くなったからかな)、僕は結構好きだったので、こちらも後日レビューをあげたいと思います。
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