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ふたりの人魚のKKMXのレビュー・感想・評価

ふたりの人魚(2000年製作の映画)
4.1
初ロウ・イエ。ぜんぜん知らなかった監督で、マイフェイバリット劇場・ブルースタジオでの特集上映がなければ一生出会わない作品だったと思います。
感想としては、ど真ん中ではないものの割と好きです。なかなかグッと来ました。耽美的な綺譚。儚くも美しい映画でした。

映像を撮る仕事をしている『僕』は、バーの水槽で人魚を模して泳ぐ仕事をしている美女メイメイと出会い、恋人同士になる。
ある日、メイメイのもとにマーダーと名乗る男が会いにきた。マーダーが言うには昔の恋人・ムーダンとメイメイは瓜二つで、メイメイをムーダンだと思い込んでいるようです。
そしてマーダーはムーダンとの恋物語をメイメイに聞かせていき、そのまっすぐな恋情にメイメイの気持ちは揺らいでいく…といったストーリーです。


本作の主人公であり語り手の『僕』は、カメラを回すだけで劇には登場しません。なので、僕のパートはすべて僕の主観で語られています。

この『僕』と、古い恋人を探し求めるマーダーとの対比が、メイメイを通じて語られているような印象を受けました。
メイメイは『僕』に対して、ムーダンのようにいなくなったら、マーダーのように探してくれる?と尋ねます。僕は一応イエスと答えるもの、どうもガチ感がない。メイメイはマーダーのガチ恋を知って、僕との間には果たしてガチ感があるのだろうか?と揺らいだのではないでしょうか。

マーダーの行動は愛というより執着にも思えます。しかし、『僕』は逆に執着なさすぎ。「俺には君だけなんだ!ベイベーこんな俺だけど愛してくれるかい!」みたいな感じゼロ。何かモメても「やれやれだ」とか言って向かい合わなそう。なので、メイメイは手応えを感じてなかったのでしょうね。
この男、常にカメラ越しでしか相対さない。もちろん映画的演出なのだけど、その『1枚幕を張っておく』スタイルが、僕の心性を表しているように思えました。傷つきを恐れて、うまく自分を守って、それゆえ誰かを本気で愛せなくなってしまっているような印象です。

本作はアートっぽい手触りでありクールで美しいですが、語っている内容はかなりホットだと感じました。人を愛したらガチであれ!と言われているようで、襟を正される思いでありました。


演者について。メイメイとムーダンを1人2役で演じたジョウ・シュンはかなりキュート。しかし、ムーダンは思いっきり少女なので、やや無理があったか。ツインテールが似合わないし、あどけなさ表現が少し強引だった印象です。一方メイメイは最高に美しかった。ツインテール似合わないけど、パツキンロングのフルウィッグはバッチリ!人魚を演じる時の濃いめのメイクがセクシーでした。
マーダーを演じた方はドラッグ依存で早くに亡くなってしまったとのこと。マーダーはなかなかに切ないキャラだったので、余計切なくなりますね。

撮影はハンディで接写が多いです。その意味ではダルデンズっぽさもあります。ドキュメンタリータッチというか、生々しい。90分ない尺だから楽しめましたが、このテイストで長尺になると映像的にもキツい可能性大。ブルースタジオでの次の作品『天安門、恋人たち』は長いので合わないかも。
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