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アイアンクローのKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 カ…カテェ!まるで溶岩石のように凝り固まったフリッツ・フォン・エリックの毒親ぶり!

 WWEきっかけでプオタになったKKMXちゃんとしては本作マストな作品で、大嫌いなA24だがスルー不可避なので鑑賞。正直言って心情表現が弱く、いかにもA24っぽいアート風味の薄味映画でしたが、実話ベースで、その実話が目ん玉飛び出るストロングスタイルな悲劇なので、それなりに観れました。とにかく、実話の方がカテェ…

 元々自分は長文野郎ですが、今回はこれまでにない長文、最長クラスになりました。仲良くしているフォロワーの皆様向けなので、初めて俺の文を読む方は本文オススメしません。あまりにも長いからインデックスつけたよ。正直全部読むのはメンドいと思いますので、序盤のネイチの章を読んでいただければ幸いですね。俺が言いたいのはこれに尽きる!Wooo!



【最高男・ネイチについて】
 いろいろと語るべき感想はありますが、やはり俺っちがリスペクトしまくるアメプロのレジェンド、ネイチャーボーイ・リック・フレアーが劇中でひっそりと重要な役割を果たしており、それが最高でしたッッ!まさに、ネイチきたか、って感じですね!ネイチだけはガチ!Wooo!

 ネイチを演じたアーロン・ディーン・アイゼンバーグさんは顔立ちはネイチとは違いバカっぽさがなく、甘く現代的なので似てはないです。しかし、リングに立つとどことなくネイチのマヌケな5頭身体型っぽさが醸し出されて感動ッッ!ちゃんとリング上でバカダンスもキメてくれたし、Wooo!
 何より、ネイチのマイクパフォーマンスの再現度がヤバい!ネイチはとにかくマイクがめちゃくちゃ面白い。ネイチのマイクとおもてなしレスリングは存在感的な後継者であるロック様にも受け継がれています。
 さて、ネイチのマイクなんですが、試合前にテレビインタビュー形式で相手を煽るんですよ。しかし、だんだんテンションが上がっていき、目ん玉カッ開いて関係ない自分上げとかし始める。「この高級ジャケットはいくらした、高級ワニ革の靴はいくらした」みたいなアホなことを本気で言い出す始末!関係ねぇだろ!しかもテンションMAXすぎて手に負えないッッ!ちなみにこんなこと言ってますがネイチのファッションはどことなくマヌケです。特にサングラスがマヌケなんだよなぁ〜、Wooo! 🤣
 つまり、俺はそれほどの男だ、と主張しつつ、思い上がったマヌケ野郎としてのキャラクターを面白おかしく演出しているワケです。どんどんカメラに近づいて行くのもウケます。そして、本作ではアーロンさんがこれを完コピ!しかも結構な長尺割いてましたよ!つまりそれだけ価値があると制作陣も判断したということだ!Wooo!
 いや〜このテレビでの煽りシーンだけでもアーロンさんは主演男優賞です(俺的に本作の主役はネイチ。ネイチが出る以上主役なのであるッッ!Wooo! )!



【アメリカにおける当時のプロレス事情】
 そして、このガーエーは父・フリッツが執念を燃やすNWA世界ヘビー級王者の実在感を疑似体験できる良い教材でもありました。
 NWAとはアメリカ合衆国のプロレスプロモート連盟。正式名称はナショナル・レスリング・アライアンスと呼ばれる寄り合いです。80年代中期くらいまでのアメリカのプロレス業界は各地に地元密着のプロレス団体がありました。それらのトップがNWAに加盟しているとNWA世界王者を地元に招聘できてタイトルマッチができる、というシステムです。
 NWAの世界王者はそれぞれの地元に出向き、地元のトップ選手と試合をするため、ヒール(悪役)でなければなりません。しかも、地元の王者を立てつつ、ベルトを防衛しないとダメです。なので、試合結果は反則防衛など有耶無耶になることが多く、「あのまま戦っていればウチらのチャンピオンが勝ったが、世界王者は卑怯だからズルく防衛しやがった」みたい思いをファンに抱かせる必要があるんです。逆に地元の王者をボコってしまうと、試合後ファンに襲撃される恐れがあるのです。ネイチの自伝には試合を終えてコソコソ逃げ出すシーンが出てきます(ちなみに一緒に逃げる仲間は『ゼイ・リブ』のロディ・パイパー師匠だったりする)。
 本作で登場する世界王者はハリー・レイスとネイチ。2人ともぜんぜん強そうじゃねぇ🤣 レイスなんてルックス川瀬陽太そのものですからね(しかしレイスはガチ最強説アリ)。そんな雰囲気と相手を立てるテクニック(あと長く戦えるスタミナ)、そして煽りの巧さが王者たる所以なのでしょう。ネイチの面白煽りは、地元ファンに「あのイケスカねえ野郎を地元チャンプにぶっ飛ばしてもらいてぇ!」という気持ちを抱かせるためにやっていると言えます。ただ、ネイチは楽しくなってやってる側面も否定できそうにないけど。
 本作ではネイチvsケビン、レイスvsケビンが描かれて、特にレイス戦はめちゃくちゃケビンに声援が飛んでいて、なるほど世界王者はこの雰囲気でうまく相手を立てて、それで負けずに防衛しないとダメなのか、と実感できました。それが本作で生々しく描かれており、良き体験になりました。

 昔はルー・テーズとかが王者になっていたので、わかりやすく強い選手が王者だったかもしれません。しかし、70〜80年代はレイスやネイチみたいなタイプがトレンドでした。フリッツが王者になろうとしていましたが、あのカテェ頭だと王者としての器用な振る舞いは難しかったのかもしれないです。

 そして余談ですが、このNWA体制をブチ壊したのがWWE(当時はWWF)のビンス・マクマホン。スーパースターであるハルク・ホーガンのカリスマ性とケーブルTVの力を利用して地方の団体をどんどん併呑し、アメリカのプロレス界を統一しました。ビンス、織田信長みたいなモンです。ちなみにビンスは性暴力問題を起こして、現在はWWEから追放されました。自ら本能寺の変を起こしたようなモンですな。
 終盤、ケリーがインターコンチネンタル王者というベルトを持ってましたが、これはWWFのベルトです。中堅のベルトで、トップのベルトでは無いので、フリッツから「いつ世界王者になるんだ?」と言われていたワケです。

 プオタ的な前置き(俺としては前置きが本編、あとはオマケだ!Wooo!)はこれくらいにしてあらすじ〜考察いきます。



【あらすじ】
 70年代末〜80年代にかけてのアメリカ、テキサス。かつての名悪役プロレスラー、フリッツ・フォン・エリックはテキサスでプロレスの大プロモーターとして確固たる地位を築いていた。そして、息子たちを自分が届かなかった夢である、NWA世界ヘビー級王者にしようと厳しく教育していた。フリッツは息子たちの意思には無頓着で、まるで自分の一部のように扱い続けます。やがて子どもたちは父親の押し付けを内面化し、プロレスラーになっていきますが、ひとり、またひとりと悲劇に見舞われていきます。これが世に言う『エリック家の呪い』であり、目を覆いたくなる呪いの顛末が描かれていく…と言う話。



【エリック家の問題】
 父・フリッツは子どもたちに世界ヘビー級王者になることを押し付けるように躾けたため、息子たちは洗脳状態で育ちました。子ども同士に序列をつけて競争を煽り、同時に父親を絶対視させ、命令には「イエス、サー!」と答えさせる。そのため、息子たちは主体性と自尊心を奪われて成長しました。しかし、それはフリッツにとっては良いことです。何故ならば自分の意のままに動く駒が育ったからです。
 さらにフリッツは息子たちをちゃんと褒めません。認めない、承認しないのです。何をしても必ず難癖をつける。ケビンが先に述べた王者レイスと戦った時、場外でブレーンバスターを喰らい、コンクリに背中を強打しました。それでもなんとかカウントギリギリでリングに戻ったケビンですが、父に「遅すぎる」とダメ出しを喰らいます。何をやっても「よくやった」が無いんですよ。息子たちは承認がほしいはずなのですが、永遠に求めているものが手に入らない。これは厳しいです。

 フリッツは悲しみを受け止めません。これもかなり異様です。「男たるもの悲しまずに前を向け!」みたいな有害男性イズムが透けて見えます。3男デビッドが亡くなった時、悲しみに暮れることなく、前を向くことを息子たちに強要していました。フリッツはプロモーターなので、ショーを続けなければならない面もありますが、彼は基本的に悲しむとか泣くとか、恐るとかのネガティブな感情から目を背ける様子が窺われます。そして、息子たちもそれをどことなく内面化しているように感じます。彼らはギリギリになるまで弱さを吐露できず、結果それで追い詰められていきました。
 さらに、母親も似た感じなんですよ。ぜんぜん向かい合わない。5男マイクが障害を負った時に、母に「怖い」と弱音を吐きます。しかし、母はそれを受け止めず、「神に祈ろう」とマイクと向かい合いませんでした。この後、マイクは自殺。エリック家は万事これです。

 つまり、この両親、都合の悪いことや、嫌なことから逃げるんですよ。フリッツはよく「兄弟で問題解決しろ」と投げますが、これは自分が責任を負いたくないからです。実際、この対応でケリーの自殺を止められなかったですからね。
 こう考えると、マイクもケリーも、親が自分の苦しさを支えてくれず(親のせいで苦しくなったのに)、精神的に見捨てられて死を選んだ、と言えるかもしれない。

 悲しむ時に悲しまず、恐る時に怖がらず、傷ついた時に傷つきから目を逸らすことは、後々それが大きな負債としてやってきます。つまり、内外で起きたことに責任を取らない。このネガティヴから目を逸らして逃げる姿勢が、呪いを加速させたと考えられます。
 「男たるもの〜」みたいな感じで悲しまずに強がる態度って、これこそが臆病者なのだと思います。重要なところでケツをまくって逃げるチキンっぷりが、有害男性のマインドだと言えますね。

 エリック兄弟のようなタイプの被虐待児は、虐待した親を「愛してる」って過剰に言ったりする傾向があります。ケビンもやたらと家族を愛しており、それを強調します。まぁ兄弟は愛しているでしょうが、父に対してはどうなんだ?と思いますね。側から見てると洗脳だよね、みたいに感じます。この辺はリアルでしたし、実際ケビンも今でも父を愛しているのでしょう。

 ちなみにフリッツやその妻(兄弟の母親)についての物語は語られません。なので、彼らがなぜ毒親になったのか、そのルーツは不明です。しかし、この夫婦は長男を幼い時に事故で亡くしています。この体験がエリック夫妻に深い傷を与えたことは容易に想像できます。夫妻が傷つきから目を逸らし続けるのは、この体験が影響している可能性が高いのでは、と思います。子どもの喪失って、想像を超える痛みと混乱をもたらしますので。
 人が毒親になるには、それなりの理があります。本作は兄弟の話なので、その辺はほとんど触れられてこなかったのは残念ですが、兄弟の心理描写も貧しいので、そもそも作り手に触れるセンスが無かったのかもしれません。



【ケビンはなぜ呪いを解けたのか?】
 本作で描かれたエリック家の息子たちは、次男ケビンのみが生き残ります。3男デビッドは急病で亡くなり(間接的に父が影響している)、4男ケリーと5男マイクは自殺。ちなみに長男は早逝しており、本編にはほぼ出てきません(後述するラストにちょい出)。

 なぜケビンだけ生き残れたのか。これはめっちゃわかりやすいですが、良きパートナーに恵まれたからですね。パートナーのパムさんは、めちゃくちゃ出来た人で、理解があるし優しいし、辛抱強い。こんなパートナーがいれば、まぁ呪いも解けますわな。なので、ケビンの破呪はちょっとチート感が強い。はっきり言って、ケビンは運が良かった。まぁ最高の相手とパートナーシップを組めたのはケビンが好人物だったから、とも言えるけど。
 どちらにしろ、家族外の人とどう出会って、それをどう生かすかが、呪いを解いて生き残り、自分を取り戻すポイントになります。運の要素は強いけど、家族の呪いで苦しんでいる人は、できるだけ外の世界の人とつながれるよう動くことは大事ですね。ただ、悪いヤツもいるから要注意だけど。


 破呪の主要因は最高パートナー・パムさんだけど、結構重要なサブ要因も描かれていました。それは承認です。そして、ケビンを承認した人物は…そうッッ!あの男!業界一のモテモテ男(自称)ネイチであるッッ!Wooo!
 マイクの死後、ケビンはネイチと世界王者を賭けたタイトルマッチを戦います。結果はケビンの反則負け(前述のように、ネイチやレイスはたいていこのパターンで防衛)。しかし、試合後ネイチはロッカールームにやって来ます。そして、ケビンに「なかなか良かったぜ。よければ一杯どうだ?」と声を掛けたのです!ケビンは、絶対王者ネイチからの承認を得たのです!飲みには応じなかったけど、この後ケビンは実家を出て、パムや子どもたちと暮らし始めます。
 この流れを考察すると、ケビンはこれまで承認を得ることができず、自尊心が乏しく、パムに支えられつつも精神的に自立できなかった。しかし、親父よりも圧倒的にデキる、業界イチのモテモテの伊達男(自称)であるNWA絶対王者ネイチから認められたため、それが心の養分になり、ケビンは1人で立つことができるようになった、もしくは自立のきっかけとなるよう後押しとなった、と言えます。

 いや〜、マジでこのシーン、涙出ましたよ!何せネイチの言葉ってのが、ネイチ信者にとっては最高すぎる展開ッッ!Wooo!
 実際、ネイチはこの手の話がままあり、面倒見がいいというか、割と後輩にポジ出しする人みたいですね。武藤や天龍なんかも、やっぱりネイチに承認されて支えになったみたいですし。アメプロ業界でもネイチの人望高いですからね。
 しかし、ケビンはネイチと飲みに行かずによかった!何せネイチは寝ないで延々と遊ぶ超人ッッ!後年ネイチはフォー・ホースメンというユニットを組むのですが、アーン・アンダーソンを始め他の3人も寝ないで遊べる超人たちで、不眠不休で遊び回った結果、なんと運転手(マネージャーだったかも)が過労死!さすがにネイチも深く悲しみ、深く反省したようです…って当たり前だッッ!だが、フリッツならば反省しないだろうね。絶対に目を逸らす。これがフリッツというかエリック家の大きな問題だったのです。



【ディテールの解説/実話との比較】
 本作、結構細かい設定を説明しないので、割とわからないというか、何?と思うシーンもありました。また、心理描写も意外とボロくて、主役ケビンと5男マイク以外は結構描写弱い。特に、4男ケリーに関してはかなり内面の描写が乏しく、終盤の展開はかなり唐突な印象を受けました。実際のエピソードをdigると、それなりに事情は把握できます。

 また、本作におけるフリッツはただの毒親で、内面はほとんど垣間見れません。なぜ彼はあれほど兄弟を支配し、なぜ痛みと向かい合えなかったのか。作中にはほとんどヒントがありません。とにかく若い頃は経済的に苦労したっぽいので、その影響があるのか、くらいしかわかりません。ジャックを失った時の話とか掘って欲しかったが、資料が無かったのでしょう。とはいえ、もっと人間フリッツ・フォン・エリックを知りたかった。
 フリッツに関するラストも有耶無耶で不完全燃焼。せめてケリーの死後、妻と離婚したくらいのところまでは描くか、エンドロール前に「その後脳腫瘍となり、心のバランスを崩して孤独に死んだ」くらいの説明は欲しかった。
 さらに、フリッツの晩年や、ケビンとの関係も実際のエピソードの方が濃ゆかったりします。尺の問題と、本作に関わっているケビンが父子の話ではなく兄弟の物語にしたかったため、絶対に映画化した方が良かったエピソードも描かれませんでした。

 この辺、気になったことをツラツラと書いていきます。

①末弟クリスが登場しない
 クリス・フォン・エリックは兄弟の中でも最も悲劇的な選手です。身長も170無くて一般的なアメリカの成人としても細身で小柄だった人ですが、デビューすることになります。しかし体型的に無理があり、またステロイドの影響もあってか、デビュー後1年で自殺しました。
 監督は「あまりにも立て続けに死が登場するので、悩んだが登場させなかった」とのこと。マイクのキャラに統合したとのことなので、もしかしたらアーティストっぽい繊細さを持ち合わせた人だったかもしれません。

②ケリーの死因
 4男ケリーはバイク事故で片足を失いながらもリングに復帰し、WWFで上述したIC王者になりました。しかし、彼は痛み止めを常用し、ヤク中に。彼は死ぬ前にコカイン使用で有罪となり、実刑が決まっていました。そして、ブタ箱にブチ込まれる前に自殺したのです。
 本作ではドラッグでパクられたことは描かれておらず、終盤に再登場した時はなんか情緒不安定なだけで、その死も唐突な印象を受けます。しかも自殺に使ったのは父にプレゼントしたピストル(実際にはショットガン)。足の痛み止めを服用し、ヤク中になった描写くらいしっかり描くべきだと思いました。この辺はA24って感じです。
 そして、片足を失ってもリングに上がった理由は、フリッツの息子として生きる以上、プロレス以外の選択肢は無いと思い込まされていたのかもしれないです。ケビンとのスパーの時に「他にも道はない」みたいなことを言っていましたので。ただ、全体的にケリーの心情描写は乏しく、もうちょい描けたのでは、と思いました。
 本作が俺っちのツボに刺さらない理由は、この辺にありますね。ケビンは兄弟の絆を描きたかったとのことで、実際ウエットな表現で感動を誘う演出はありましたが、正直マイク以外の心情描写はショボく、絆を描くにはケリーとデビッドを煮詰める必要があったと思います。

③ケリーの世界王者奪取
 本作ではフリッツ念願の世界王者をケリーがネイチから奪取します。しかし、試合もダイジェスト、その後喜ぶ描写もなく、どんよりとしたムードでした。しかも、その後ケリーがバイク事故に遭うので、事故で返上っぽいムードも漂っています。
 これは、デビッドが亡くなったため、香典がわりに王座を一時的にプレゼントされたようなもので、すぐにネイチに取り返されています。本作だと王者になってもデビッドを失った悲しみから逃れられないと取ることもできますが、エリック家全員が「香典だよな」とわかっていて、喜ぶことが難しかったと考えることもできます。

④デビッドの死について
 本作だと、デビッドは内臓の不調を抱えており、ケビンが止めるのも聞かずに自らの意志で日本巡業に行ったという描写でしたが、父フリッツの命令だったようです。今は日本に行け、帰国後手術せよ、みたいな感じで。この辺も何故かオミットされていました。
 深読みすれば、内臓疾患で巡業を休んでしまえば、父から叱責されることを恐れ、また内在化していた弱音を吐かないという男らしさに縛られた結果、あの選択をしたのでは、とも読めます。ケリーの時に比べると映画的な表現になっているとも言えます。

⑤あの世での兄弟再会
 ケリーが自殺後、三途の川を渡ると向こうにデビッド、マイクがおり、その後ちびっ子が現れます。彼はエリック家の長男・ジャックJr(フリッツの本名がジャックなので)。小さい頃にジャックJrは感電事故で亡くなっています。この事って、本作で説明されていましたっけ?観ていて長男の話はこの時まで出てこなかったような?家族写真にジャックの姿が別窓で写ってたくらいだったと思う。見逃していたのかも。どちらにしろ、唐突だし、よくわからない人も多いのでは?
 また、あの世の兄弟大集合でクリスが居ないのもずいぶんと可哀想な気がします。う〜ん、A24。

⑥その後のフリッツとケビン
 マリさんから教えてもらったネット記事がめちゃくちゃ詳しくて面白いです。
https://igapro24.com/2020/12/09/noah2020-42/
 この記事で、ケリーの死後、フリッツは離婚しおかしくなります。そしてケビンに銃を突きつけて心中を迫る話があります。この話でフリッツの弱さが浮き彫りになりますね。
 また、フリッツの死後、ケビンも自暴自棄になり(パムとネイチのお陰で呪いが解けたとか言ってる俺っちの考察がいかに机上の空論であるかを証明するような展開だが…まぁリアルエピソードとフィクションの内容は違うし、俺のは映画で描かれた事象の考察だしな)、なんとガンショップに窃盗に入ります!その時、店員からかけられた言葉が熱すぎる!このシーン、なぜ映画で描かなかったのか。実に残念です。

 個人的には、ケビン自身の深い意味での再生を観たかったです。フリッツの心中未遂〜ガンショップの話を描けば、かなりケビンの深い部分が描かれたのではないだろうか。


 今回の考察、なんと8千字以上ッッ!カ…カテェ!恐れ入谷の鬼子母神ッッ!目ん玉飛び出るストロングスタイルの長文ッッ!ネイチの話とかNWAの話とか書いたからな。まぁ、そっちが本編だけどな!カ…カテェ!


【追記】
 しかしハネでないですね本作。同時期で同じA24のパストライブスはハネてそうです。レビュー数も2倍以上ついているし。なんか納得いかない😎
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