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アニー・ホールのRenのレビュー・感想・評価

アニー・ホール(1977年製作の映画)
4.0
数少ない鑑賞済みウディ・アレン作品の一つ。『(500)日のサマー』が「21世紀の『アニー・ホール』」と形容された(出典は忘れた)のも超納得だし、同作をオールタイムベストに入れている自分にとっては今作もとても好きな恋愛映画。

93分に及ぶウディ・アレンのマシンガントーク。
アカデミー作品賞を雑に①歴史・伝記もの ②優れた社会批評性を含んだもの ③演出の発明と作家性(とエンタメ性)で突き抜けたもの に大別するとしたら今作は③。
恋愛模様はやたらリアルに、でも演出は「第四の壁の突破」「アニメーションの挿入」などケレン味たっぷりに。中でも「時系列操作」「画面2分割」といった編集は『(500)日のサマー』にも影響を与えていると思われ、この浮世離れ感が46年前に完成していた事実が面白いし突き抜けている点だと感じた。ウィットに富んだ長回しの会話の乱打は、今泉力哉的でもあるかもしれない。
個人的ベストは台詞と別の字幕が表示される演出。

この世の殆どの恋愛は些細なきっかけで始まり胸躍る毎日を経てなんとなく冷めていき終わらせて悔恨の念に苛まれる、そんな人生経験であるという真理。そこに明確な理由は無く「なんか飽きてしまった」恋愛を経験した全ての人に送る普遍のラブストーリーだ。なので今作を「難解」と説明するのはちょっとミスリードかなと思った。何の話なのかはずーっと分かりやすい。

序盤のエビではしゃぐ2人の件が、その後のアルビー(ウディ・アレン)の心情に効いてくる脚本もニクい。あんなにくだらないことで盛り上がれた運命の人はアニー・ホール(ダイアン・キートン)しかいなかったという未練になって表れるのが分かりやすいほど分かりやすい。アニーが魅力的に映っていた出会いの頃と素っ気なくなった倦怠期で別人のように見える演技・演出プランも◎。

シュールさやペーソスを存分に含みながら、過去の恋愛に対して彼らが救われているような着地をするのも印象的。こんな別れ方た後の関係性は理想的だけど、過去を踏まえた現在の自分を肯定するエンドになっている後味は居心地が良く丁度いい温度感でまとまっていた。

彼の作品は他『ミッドナイト・イン・パリ』『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』しか観たことないので手を出していこうかな....。

【余談】ジェフ・ゴールドブラム(『ザ・フライ』のハエ男)やシェリー・デュヴァル(『シャイニング』の絶叫お母さん)らがチョイ役で出ていて驚いた。どちらも一見で分かる個性派俳優。
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