針

切腹の針のレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.5
前から題名だけは知ってたんだけど観たらめっちゃ面白かったです。
舞台は江戸時代初期。徳川家がおのが支配を盤石にせんとあれこれ画策していた時期ですね。
幕府による大名家のお取り潰しや改易によって仕事を失った武士が大量に浪人化し、江戸に流れてきます。その中で特に食い詰めた浪人が、大名屋敷に出向いて切腹のために屋敷の玄関先を借りたいという、「武士道」の発露の形をとった一種の脅迫行為を行ない、いくらかの金品をせしめようとする小事件が頻発。それに対して強硬な手段も辞さないという構えを取った井伊家の家老(三國連太郎)のもとに、ある日津雲半四郎(仲代達矢)という浪人が切腹しにやって来る……。

言葉では伝えづらいのですが、この変わった設定がすごく面白くて、この時点でもう勝ってるような話じゃん! と思ったらその後のストーリーがさらに凄かった……。
展開が非常によかったのであとは書きませんが、これほど周到なサスペンスもそうそうないんじゃないかなーと自分は思ったぐらい。設定上の価値観は近世なんだけど、それを操作して構成していく視点はすごーく現代的なので、日本人なら誰が観てもまぁ分かるんじゃないかな。

カメラワークは派手じゃないけどすごく端正でいいと思う。音楽・武満徹によるベベン、ベベンみたいな琵琶の音と合わさって適度に緊張感を高めてる気がするし。

あとは津雲役の仲代達矢とそれに対する家老の三國連太郎の存在感がすごくて、おそらくこのふたり無くしては成り立たんなーと思う。総じてふたりとものっぺりした能面みたいな顔でしゃべるんだけど、両方ともその圧が強い。特に仲代の話し声の厚みがいいなーと。

むかしTwitterで見かけた投票制の邦画ランキングで堂々20位だったのでそのうち……と思ってたんだけどかなり良かったです。おすすめ。
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