ほーりー

切腹のほーりーのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.5
物語には感情に訴えかけるものと、一方では理屈で責めてくるものがあると思う。

小林正樹監督、橋本忍脚本による時代劇『切腹』は前者でもあり尚且つ後者でもあるという稀有な作品だと思う。

キネ旬ベストテン入りや毎日映画コンクール、ブルーリボンと当時の名だたる日本の賞に輝いただけではなく、カンヌ国際映画祭にも出品され、結果、審査員特別賞を獲得した傑作である。

本作の見せ場の一つである、竹光での切腹シーンは残酷すぎて観ていて思わずウギャー!と声が出てしまった。まあ『日本のいちばん長い日』の切腹シーンでも声が出てしまった私なのだが。

一寸先の展開が全く読めないストーリーなので、巧妙なプロットが好きな人にとって本作は堪らない映画だと思う。

しかも単なるどんでん返しだけの映画ではなく、根底には「武士道くそったれ!」という痛烈なテーマが貫かれているのも良かった。

老いぼれながらも鬼気迫る浪人を演じた仲代達矢が本当に素晴らしい。「いささか拙者の存じよりの者であってな」の台詞の格好良さに思わず身震いした。

そして大立ち回りをする際の独特な構えも印象的。広げた両腕をクロスして敵に斬りかかる姿はちょっと仮面ライダーや戦隊ヒーローを彷彿させる。

ラスト、どアップで虚ろな表情を見せる三國連太郎も忘れ難い。その他、石濱朗、岩下志麻、丹波哲郎、三島雅夫、中谷一郎、佐藤慶、青木義朗、松村達雄、稲葉義男、科特隊キャップになる前の小林昭二とキャスティングも豪華だった。

■映画 DATA==========================
監督:小林正樹
脚本:橋本忍
製作:細谷辰雄
音楽:武満徹
撮影:宮島義勇
公開:1962年9月16日(日)
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