樽の中のディオゲネス

プロヴァンスの贈りものの樽の中のディオゲネスのレビュー・感想・評価

プロヴァンスの贈りもの(2006年製作の映画)
4.0
 金銭の豊かさと、心の豊かさ、どちらを優先するかは私たちにとって大きな問題でしょう。お金があればいろんなことができ、結果として心の豊かさが手に入る、という主張がある一方、心の豊かさがあればお金なんていらない、という主張もありそうです。どちらも満足いく回答ではない気がします。
 この映画は、こうした問題に解答を与えるものではないように思います。ただ、問題を提示しているのです。「あなたならどちらを選びますか」と。ラッセル・クロウが投資の仕事をしている間、せわしなくカメラが移動するのとは対照的に、プロヴァンスでの映像は、自然を見せつけるかのように優雅でのんびりとしています。けれども、田舎暮らしに憧れてそこで生活を始めてみたものの、新鮮なのは始めの内だけで、やがてそこでの日常生活に飽きてしまうようなことは、よく聞く話です。
 そもそも、「心の豊かさ」とは何でしょう。投資家ラッセル・クロウにはそれが分かりません。そんな彼をこの映画は、「人生の素朴な喜びを分からない人間」と評価します。言い換えれば、素朴なことに対して喜びを感じられる人は、心が豊かだと言えるのでしょう。
 とはいえ、この映画は素朴さを称えた、牧歌的な部分を強調していることから、先の問題に対してはある種の回答を出しているのかもしれませんね。