樽の中のディオゲネス

ナチュラル・ボーン・キラーズの樽の中のディオゲネスのレビュー・感想・評価

4.0
 バイオレンス映画にしては社会風刺が強いし、社会派映画にしてはあまりにふざけている。首尾一貫しているのは、映像と音楽へのこだわり。素早いカット割りに、突如出てくるアニメーション。そして、「誰でも知っているような」クラシック音楽の(ポピュリズム的な)悪用。
 たとえ、この映画の原作がタラちゃんによるものだという情報が無くても、「タラちゃんーロドリゲス氏」系列の面白さがあふれ出ていることを感じざるを得ない。最初のシーンには、「パンプキンとハニーバニー」や、デス・プルーフのダンスシーンと通底するものがあるし、なんといっても、客に語りかけるセリフが、痛カッコいい。
 ありふれた映画なら、この作品の題材は、「俺たちに明日はない」のボニー&クライドの逃避行へと還元されてしまうかもしれない。けれども、この映画には、それでは収まりきらない面白さが詰まっているのだろう。面白いものは複雑であり、したがって、すぐには理解しがたい。
 そこで、「俳優陣も豪華だし、もう一度観ようかな…」とか思ってしまうのだが、そう思うことで、「お前も所詮無知な大衆の一人じゃないか」と言われている気がして、悩む。観客のこうした心理は、この作品の売り上げを下げ、この作品が大衆にへつらってはいないことを示す。観客に対して、ひどく挑戦的な作品である。