ひでやん

アラバマ物語のひでやんのレビュー・感想・評価

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.1
無垢を殺めるは無知の声。

人種差別が根強く残るアメリカ南部の田舎町で、白人女性暴行の罪で逮捕された黒人青年を弁護し、差別と戦う弁護士の父を子供の視点から描く。

父が子供に「無害な鳥を殺すのは罪」と言った話は深いなと思っていたら、原題がそのまま「ものまね鳥を殺すのは」になっていた。「あの家には狂った男がいる」という噂話を聞けばそれを信じて近づこうとしないが、怖いもの見たさで近づいちゃう好奇心。しかし噂話をする近所も、それを信じる子供もブーという男を知らない。学校で嫌がらせをする生徒も白人の陪審員も黒人青年トムという男を知らない。無害な鳥を殺す者は、その美しい鳴き声を知らない。

無知が生むのは差別と偏見だ。「みんなが言うからそうだ」と思い込み、罪の意識もないまま弱者を叩く。それはSNS時代も同じである。木の穴に置かれた贈り物はブーの優しさで、「隣人を愛せ」というメッセージのようだ。相手を思いやり、誰もが隣人を愛せたなら、その先にジョン・レノンが「想像してごらん」と歌う世界があるのかもしれない。

終盤で被害者の父の行動に首を傾げた。裁判の仕返し?それにしては無茶苦茶。判決は後味が悪くてムカムカ。無実の者が裁かれるなら、野放しにされた罪には当然天罰だね。
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