コーカサス

キューポラのある街のコーカサスのレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
3.2
鋳物の街・埼玉県川口市を舞台に、貧しくとも明るく生きる人々を描いた早船ちよの原作を映画化。
以後続く吉永小百合と浜田光夫の純愛コンビを一躍スターダムに押し上げた。

そんなふたりの爽やかさとは裏腹に、高度経済成長に差し掛かりながら、まだまだ貧しい地方都市の現実や在日朝鮮人・北朝鮮帰国運動への差別、さらに少女から女性へ成長する過程の複雑な性問題を色濃く捉えた社会派ドラマだ。

同じ時代、同じ下町工場街を舞台にした作品と云えば『下町の太陽』(翌 1963年公開) を思い出す。

下町の太陽を燦々と浴びる倍賞千恵子に対し、下町を照らす月明かりに優しく包まれる吉永小百合。

タイプは違えど、確実に本作『キューポラ』の影響を受けたであろう『下町』と見比べてみるのも面白い。

今では埼玉県で二番目に大きな都市であり、64年の東京五輪で使われた聖火台の製作地として、また我が巨人軍の斎藤雅樹の出身地として有名な川口市。

街はすっかり変われど、かつて“キューポラのあった街”として、今も多くの人に語られ、愛され続ける名作だ。

269 2020