♪ 夜の牛達のダンスをみたかい
それはとてもブザマで素敵だった
かつて、たま“だった”人たちの記録。
全盛期の映像があるわけでもなく、衝撃の事実があるわけでもなく。淡々と彼らの現在(解散から6年経った2009年)と過去が語られる作品でした。
なので、確実に上級者向け。
まずは、たまの曲を知っておいたほうが良いです(石川さん(ランニングシャツ)の独特な世界観に躊躇なく浸れるのは、生まれ持っての上級者だけです)。
有名なところでは『さよなら人類』や『オゾンのダンス』とか。『ちびまる子ちゃん』の主題歌や、ナムコナンジャタウンで使われた曲なんかも知名度は高いと思います。
ちなみに僕が好きなのは『きみしかいない』。
知久さん(おかっぱ+チャンチャンコ)独特の“寂しさ”が漂う名曲です。あとは滝本さん(ふつうの人)の寂寥感あふれる曲も好きですね。
ただ、僕の中で、たまは四人組。
柳原さん(いつも眠そうな人)の脱退は残念極まりなく。本作で出演していないのも寂しい話でした(どんな顔をして再会すれば良いのか分からない…というのが正直なところだと思いますが)。
でも、これが“本当”の音楽性の違いなんでしょう。知久さんや石川さんたちは“奏でた音で世界観を作る”というスタイル。翻って、柳原さんは“音を模索して世界観を作る”というタイプ。鍵盤弾きとして当然の欲求に従っているだけなのです。
それは似ているようで異なる世界の話。
彼らが出会い、そして同じ空間の中で音楽を作り上げた…それはある意味で“奇跡”であり、その残影に囚われるのは生産的ではないのです。少なくとも、たま“だった”人たちは今でも“音を鳴らす楽しさ”を追及しているように見えました。確実に前向きです。
まあ、そんなわけで。
「かつて、たまというバンドが日本に旋風を起こした…」なんて伝説を紐解かずとも、音楽を楽しんでいる人たちのドキュメンタリーとして捉えても良い作品。バンドは解散しても知久さんは知久さんだし、石川さんは石川さんのままでした。勿論、滝本さんもね。