緑雨

別離の緑雨のレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.0
伏線があまりにさりげなさ過ぎて、気を抜いて観ていると見逃してしまいそうなほど繊細なサスペンス・ミステリである一方、脚本もディレクションも観客に媚びない厳しく重厚なドラマ性を持つ。

個人と共同体(家族)の優先順位だったり、プライドだったり、信仰心だったり、各々の志向・信条の相違が少しずつ歯車を狂わせて悲劇的な対立につながっていく構図が厳格に描かれた人間ドラマである。
そして、(日本人である自分にイランの社会背景を本当に理解する術はないものの)主人公夫婦はおそらく中流の上のほうの家庭である一方、家政婦の夫婦は貧困層と思われるあたりに着目すれば、社会派ドラマとしての一面もあるのだろう。

近代化しているようで前時代性がところどころ入り混じったテヘランの街や人々の風景が作品に重層感を与える。
緑雨

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