緑雨

大人は判ってくれないの緑雨のレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
3.0
ジャン=ピエール・レオ、家事も宿題も彼なりに真摯に取り組もうとしているのに何故か周囲に認められない。要領よく生きられない苦しさ。ボヤの後、急に家族3人仲良く映画を観に行った帰りの車内での楽しげな表情。少年の純粋さが周囲の無理解から損なわれていくのが切ない。

オープニングのタイトルバック、常にエッフェル塔を仰ぎながらパリの街並みを周る移動撮影。遠心力で壁に張り付くアトラクション。校外授業に出た生徒たちが少しずつ抜け出していく様子を俯瞰で撮った画。人形劇に観入る子供たちの生き生きとした表情。脱走したレオとの並走撮影。ダイナミックさやユーモアを孕んだ映像が数多い。

最も印象深いのは、護送車の中から冬の夜のパリの風景を見てレオが涙を流す場面。ここだけ逆説的にハートウォーミングなBGMが流れる。

ただ、有名なラストカットも含めて、極端なズーミングが多用されるのなは違和感が勝ってしまう。当時は斬新だったのかもしれないが。

部分部分に見るべきところが少なくない映画だと思うが、全体のオーケストレーションという点では荒削りさを感じる。行き当たりばったりで、エモーションを醸成する構成がギクシャクしているように感じる。
緑雨

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