吉田コウヘイ

海辺のポーリーヌの吉田コウヘイのレビュー・感想・評価

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
4.0
「そんなの決まってるじゃないか、シナリオだよ!」

主人公ポーリーヌを演じた、当時14歳のアマンダ・ラングレの「この映画は何に似ているの?」という真っ直ぐな質問に、62歳の映画監督は朗らかに笑ってこう答えたという。

エリック・ロメールが盟友にしてテレンス・マリック『天国の日々』、ロバート・ベントン『クレイマー、クレイマー』、フランソワ・トリュフォー『終電車』とアカデミーやセザールの撮影賞を獲得し脂が乗りまくっていたネストール・アルメンドロスと共に撮った『海辺のポーリーヌ』はシンプルだが、そこには確かな官能が、エロスが宿る。
ベルトリッチとストラーロのコンビが織りなす、細部まで作り込まれた豪華絢爛なソレとは異なる、ナチュラルなエロス。それは言い争っている間に少しずつ女の肩から落ちるワンピースの紐であり、ポン!と即物的に白い朝の光に照らされ映るバストだったりする。

幼いボーイッシュな雰囲気に高い鼻筋が目立つ、ちょっとだけ引っかかりのあるルックスがフォトジェニーなアマンダ・ラングレと、グラマーで魅惑的なブロンド美女アリエル・ドンバール。この完璧に映画的な従姉妹とその周りで右往左往する哀れな男たち。
ジャン・ルノワール『ピクニック』からやってきてギョーム・ブラック『女っ気なし』へ向かう、このフォルムの愛しさ。

「結局は、何を信じるか」

映画冒頭で入ってきた門を出ていく、スマートな円環構造を形成するラスト。ドンバールはポーリーヌに言う。

「結局、真実なんてわからない。彼が嘘をついているのか、いないのか。証拠もない。だから私とあなたは別々のことを信じましょう。そうすればお互いにハッピーだから」

観客はその真実がどちらかを知っているのだけれど、彼女達登場人物は知らない。知る由もないなら、嬉しい方を信じればいい。

それもまた彼女たちにとっての、真実なのだから。