アーリー

父親たちの星条旗のアーリーのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
4.0
硫黄島プロジェクトのアメリカ視点。
戦争映画というよりは、ドキュメンタリーみたいな感じで観れた。
写真はみたことあったけど、詳しい背景などは知らなかった。不思議な力があるのは間違いない。始まりの予感的なものを感じさせてくれる。

硫黄島制圧作戦の前線をうつしたパートと、写真に映ったうちの三人が国民に国債を買ってもらうよう国内を行脚するパートの二部構成。

戦争万歳映画では決してないし、アメリカ万歳でもない。寧ろ今作を観て感じたのは戦争の虚しさ。守るべきものの国は、本当にその価値があるのか。国内であの有名な写真が話題になり、ビジネスの匂いを感じた人たちが旗を掲げただけの自分たちを英雄扱いする。大勢の人の前でスピーチさせたり、旗を掲げるシーンの再現をさせたり。確かに国債を購入させることは大事やったのかもしれない。けどイーストウッドは弾や砲弾が飛び交う戦場のシーンと交互に映すことで、その滑稽さを強調してる。国のために戦うのではなく、友のために戦う。そうなってしまうのも仕方がない。
「アメリカンスナイパー」と同じように、戦場と本国の違いを浮き彫りにしつつ、戦争知っている人と知らない人の違いをも映し出す。戦場までの実際の距離以上に、兵士たちと民衆は離れていたのかもしれへん。戦争経験者の方は戦争映画なんか観ないと何かで読んだ記憶があるが、その意味を少しだけ理解できた気がした。

終始虚しい。
戦場で理不尽に人が死んでいく虚しさ。
旗を掲げた写真に写っていただけで国内でまるで英雄のように扱われる虚しさ。
実際に血を流し、命を失った兵士たちにはスポットライトが当たらない虚しさ。
大人の都合で真実を隠さなければならない虚しさ。
この手の映画を観ると戦争はしてはいけないと思うけど、大体は画面に映るグロい死体とか凄惨な戦場の模様が原因やったりする。でも今作に限ってはその虚しさが一番堪えた。

面白かったと言うのは違う気もするけど、あの写真絡みの話を知れたという点では面白かったし、良い映画やった。
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