アーリー

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカのアーリーのレビュー・感想・評価

4.0
2024.2.7

レオーネの遺作。「ゴッドファーザー」を蹴ってまで描きたかったギャングたちの叙事詩。

禁酒法時代の物語。ギャングといえばこの時代。デニーロ演じるヌードルスとジェームズ・ウッズ演じるマックス。この二人の出会いから別れ、そして再会を当時のアメリカの空気感と時代の流れを含めて描く。男の友情がメインとなるこの作品。少年時代、青年時代、現在の三つの時代が交錯する。現在のヌードルスが過去を振り返る内容となっていて、モリコーネの「ニューシネマパラダイス」を想起させるような哀愁漂う劇伴が伴って非常にノスタルジーを感じさせる作り。ちょっとしたミステリー要素も含みつつ最後まで飽きさせない展開や、ノスタルジーにどっぷり浸れる傑作。

どうしても「ゴッドファーザー」シリーズと比べてしまうが、それぞれに違った良さがある。上記の作品が三作品撮ってやっと表現した哀愁や切なさ、ノスタルジーを今作は今作だけで描き切っている。その代わりギャングらしさを感じるシーンは少ない。街中で突然銃を撃ち、人を殺すシーンなどあるにはあるが、物語の雰囲気を一変させるような迸る緊張感や、一人の男のそれまでとその後の人生や心情の変化を対比させた「ゴッドファーザー」のそれとは比べ物にならない。かっこいいギャング像が描かれることもない。ヌードルスはどこまでいってもチンピラでしかない。主人公が仲間を売るなんてギャング映画ではあり得ない。しかしその決断には友情が絡んでいる。やはりこの作品は最後の最後まで男のカタルシスとノスタルジーで覆われている。「俺たちはいつまででも一緒さ」
「やはり俺はお前を捨てるべきなのかもな」「俺たち二人ははただ不運だった」人生の35年感を罪悪感とともに生きてきた男二人が、楽しかったあの頃を思い出しながら再会する。どうしても道が違えることはある。友情や愛情は時に憎しみに変わる。あの頃はもう戻ってこないし、いまさら歩み寄ることも難しい。でも確かにあの頃は存在していたし、今お互い対面して話す事はできる。変わっていく時代、街並み、人間関係。そして変わらないあの頃の思い出。何かを懐かしみながら生きていくことはいい事なのかはわからないけど、後から振り返った時に最高に楽しかったと思える時代があるというのはいい事なんだと思わせられた。

レオーネは男の友情を描き続けてきたイメージ。それが、結果的にではあるが最後の作品として昇華された。
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