翼

父親たちの星条旗の翼のレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.2
6名のアメリカ兵が硫黄島の山頂に星条旗を掲げる写真。長引き疲弊する戦争の資金不足解消の為、敵地に力強く国旗掲揚する写真はプロパガンダとなり、あたかも戦争の勝利の証明かのように国民の目には映った。
写真に映った残存兵の3名は国債を売るための広告塔として祭り上げられることになるが、その実、撮影は戦場の中心で簡易的に撮影されたもの。映り込んだ6人はたまたま居合わせた伝令係や衛生兵。持て囃される英雄像とは裏腹に、仲間の死を傍に生き残ってしまった後ろめたさのギャップに苦しむ。向けられるカメラと焚かれるフラッシュに戦場の閃光がフラッシュバックする。

イーストウッド御大が描く戦争はどこまでもヒューマンドラマ。戦場になにかを置いてきてしまう感覚は『アメリカンスナイパー』のそれと重なる。
倒すべき敵兵にも家族があり、呆気なく命を落としていく仲間たちにも人生がある。あまりに命が軽んじられ蹂躙される「戦争」という狂気。
どの戦争映画でもそうだけど、いざ戦場のシーンでは誰が誰かなんてわからない。同じ格好に銃弾と砂埃舞うシチュエーションがそうさせるわけだが、人格を軽んじる戦場を体感させられる。

3名の葛藤を何度も何度も多角的に描くことでその失意をイヤというほどあじわうことになるのだが、どこか説教臭くも感じた。
この感想は『硫黄島からの手紙』を見ることで変わるのか。
楽しみでもあり憂鬱でもある。
翼