薄氷の上、軋む心。
おかしなものだ。血が熱く滾り、周りに人がたくさんいる時には、氷が割れるなんて思いもしなかった。しかしいつの間にか一人になっていて、軽くなったはずなのに、ぎしぎしという音が耳に鳴る。ああ、それは心が聴かせるのか。軋轢とは摩擦だといいながら、隣に兄弟はいないじゃないか。そうか。だから聴きたいのか。軋むということは、今となっては、素晴らしいことであった。俺は、薄氷の上を歩く。長くは持たないと知っていて、それでも歩く。自分で誓った道だから。後悔のないあの日の契りが、たてる軋みを聴くために。