このレビューはネタバレを含みます
一年のうち、最も胸が熱くときめくこの祝祭を、今や遅しと待ちわびていた。
身の毛がよだつほどの恐怖と悲鳴が渦巻くハロウィン・タウンの“支配者”、ジャック・スケリントンの思いつき、気まぐれ、煩悩に翻弄される町の住人たちの純真なる愛くるしさに、こちとら年を重ねるごとに愛着が増していく。
この身が朽ち果てるまで、それこそ年老いたおじいちゃんになるまで愛でたい所存。
わたしの推しは、群を抜いてメイヤー町長だ。それを今風に言うなれば、こうだろう。
メイヤー町長しか勝たん!!
彼無くしてジャックは王の座に居続けることが果たして出来たのだろうか、町の住人たちは恐怖に歓喜しながらも平穏無事にのほほんと暮らせていたのだろうか、とさえ思う。
ジャックから無理難題を押し付けられても、直ちに素早く実行に移すその行動力ないし統率力には、思わず目を見張る。
崇拝してやまないジャックの不在に居た堪れなくなり、白目を剥いて発狂しても尚、ひたすら邁進するその実直さには、思わず舌を巻く。
不器用かつ不甲斐ない様を露呈し、時には物を投げ付けられたりしながらも、メイヤー町長をささやかながら支えているヴァンパイヤブラザーズやウィッチズ等を筆頭に、町の住人たちがさりげなく力を貸すその厚い人望こそが、彼の人柄ないし功績を物語っているのではないだろうか。
ジャックの無謀な挑戦に頭を掻きながらも、己の私利私欲は皆無に等しく、“ジャックの悦びこそがハロウィン・タウンに住む全員の悦びになる”と信じてやまないメイヤー町長の真心を見届ければ、自ずと目頭が熱くなる。
放たれた砲弾に倒れ、儚く散るハロウィン・タウンの支配者の惨敗。
「こんな計画がうまくいくはずないことはわかってたんだ...こうなるんじゃないかと思ってたよ...」
悲しみに暮れるハロウィン・タウンの住人たちの中で、彼だけは重い腰を上げ、町中を駆け回り、涙ながらに声を張り上げ、悲報を伝えていく。
何と生真面目な人だろうか。嗚呼、泣けてくる。
そして、ジャックが無事に町へと帰ってきたことを知ったときの彼の胸中を思えば、瞬時に苦悶の表情から微笑みに切り替わり、嬉し泣きしている自分にも気づかされる。
ハロウィン・タウンの中で、人一倍ジャックを崇拝する彼を、わたしは人一倍崇拝する。
「次のハロウィンまで、あと365日しかないんですからね」
メイヤー町長に会える来年のハロウィンが、もうすでに恋しくて恋しくて居た堪れない。
p.s.
健気なサリー、可愛いの極み。