竜平

メランコリアの竜平のレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
4.0
とある屋敷で催される豪華な結婚披露宴、新婦である妹と、披露宴を主催する姉夫婦。そんな一幕からやがて地球に接近してくる惑星「メランコリア」。彼らを待ち受ける運命とは、という話。ラース・フォン・トリアーによる不条理的SFヒューマンドラマ。

キルスティン・ダンスト演じる妹ジャスティン、シャルロット・ゲンズブール演じる姉クレアの二つの視点で、二部構成で描かれていく。他にもキーファー・サザーランド、ステラン&アレクサンダー・スカルスガルド、ジョン・ハートなどなど出演。妹ジャスティンは精神病みたいなものなのか、見るからに情緒不安定で、また人生か何かに不満を抱いてるようにも見える。第一部の結婚披露宴パートは彼女を筆頭に身勝手な者の行動から徐々に不和が見え隠れしていき、摩擦が生まれて、やがて、という内容。姉クレアはわりとしっかり者で地に足のついた人物、という感じ。幸せな現状を崩したくない、崩れることを恐れてるとも言える。第二部からの惑星メランコリアの接近によりそれぞれの日常が別の方向へと転がっていく。対照的な現実を生きる二人の対比が全編に渡って効いてたりして、その人間模様が非常に印象的。見る側がどっち派かで共感も変わるし、結末の受け取り方も違ってくるはず。

スローモーションで魅せる冒頭約8分半のオープニング、本編を見終えてから今一度これを見てみるとおもしろい。最初はよくわからん長ったらしい映像だなと思ってたけど、この時にすでに伏線やら示唆やらあったんだなと気づくはず。いやしかし、こんなにも芸術的な終末モノってないんじゃないかな。不安感と焦燥感と、孤独感と虚無感と、どことなく滲み出るリアリティーも含めすべてを加味して「美しい」と取れる、ってのは俺だけじゃないはず。そんでハッピーエンドとは言えないあたりも、ね。まぁトリアー作品としては思いのほか鬱方向には持っていかれなかったもんで、なんかラッキー。世界の終わりや死の間際に、自分だったら何を感じるんだろう、なんてねー。
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