シュローダー

メランコリアのシュローダーのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
4.8
メランコリア "憂鬱" それは本来、全ての人間が普遍的に内包する感情であり、寧ろ「恋人」の様なものなのかもしれない。自分の結婚式を滅茶苦茶にしてしまう躁鬱気味の女性 ジャスティン 巨大惑星の衝突が迫る中、彼女は周りの人間と違い、本来の自分を取り戻していく。果たして、彼女の運命は…
この映画は巷ではバッドエンドだ鬱エンドだと言われてはいるが、実際の所全くそんな事は無い。何故ならば、この映画は「愛」についての映画であるからだ。前半部の人を不愉快にさせる事のみを目的としたとしか思えない人間描写の数々は、それに飲み込まれ、そして恐らく惑星衝突をこの時点で予知したのであろうが故に躁鬱的な奇行を取ってしまい、全てを失ってしまう主人公ジャスティンをシニカルながら憐れみの視点を持って描き出す。そして、後半 因果が逆転し、パニックを起こす姉のクレアと、逆に生気を取り戻していくジャスティン そして、「新世紀エヴァンゲリヲン劇場版 Air/まごころを君に」のキャッチコピー「だから、みんな死んでしまえばいいのに…」という言葉を思い起こさせる様な展開がやってくる。他に幸せに生きている人々を含めた、世界の全てを巻き込んで、終わりは訪れる。あのラストの情景は非常に恍惚とさせられる。劇中でも地球と惑星メランコリアの衝突の事を「死のダンス」と呼んでいる事が、僕は何より美しいと感じた。人はいつかは死ぬし、いつ死ぬかもわからない。人間が肉親よりも長く付き合わなければならないのは「死」の恐怖だ。ジャスティンはまさしく「死」の象徴たる惑星メランコリアに愛された。だからこそ、彼女だけは冷静でいられた。ある意味でこの映画はラブストーリーなのだ。だからこそ、文字通り地球が惑星メランコリアに「抱かれる」ように消滅していくラストは、非常に象徴的だと感じた。あの瞬間、世界に真にもたらされるべき平等と美があったと思う。総じて、「普通の人間の全てを道連れにして死んでやりたい!」という非常に反社会的にして、非常にシンパシーを感じる欲求に満ち溢れた危険な映画である。絶対に人に勧めることはしないが、この映画の事が分かってくれる人とは、末永く仲良くしたいものである。