しんご

アイデンティティーのしんごのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
4.3
昔おぎやはぎのショートコントで「インタビュー」というネタがあった。スーツ姿の矢作とロックミュージシャンぽい身なりの小木が無言で向かい合わせでイスに座ってるんだけど、いざ喋り出したら小木の方がインタビュアーで矢作の方がインタビューされるミュージシャンというオチ。視覚から陥る初歩的なミスリードのネタなんだけど、この映画もそんな人間が持つ感性を気持ちよく騙してくれた。

とある大雨の夜、死刑囚であるマルコム・リバースの死刑執行に関しての再審議が行われようとしていた。そして同じ日に、大雨で身動きが取れなくなった男女11人が寂れたモーテルで一夜を明かすのだが....。

モーテルが舞台だから「サイコ」(60)みたいな猟奇殺人ものかな、という先入観で見たら全然違う方向にいってやられた。90分という短い上映時間の中で起承転結がうまくまとまってたし、ラスト30分くらいにおける「転」から「結」のスピード感と裏切りがとにかく爽快だった。今思えば冒頭の各登場人物の紹介シーンも1つの伏線だったんだろうなと。

実際、根本にあるテーマはめちゃくちゃ古典的なんだけどアイディアと構成でこんなに面白いミステリーになるんだなという点に唸った一作。
しんご

しんご