すごく繊細な心の動きを描いてるけど、分かりやすく映像で補足されてて、観やすかった。
無表情で何かを見つめる登場人物が、頭の中で何を考えているのか何を思い起こしているのかを映像カットインでいちいち見せてくれる。
ちょっと説明的な演出やけど、親切でやってくれてる感じで、嫌な気はしなかった。
ヨット事故で人気者の長男を亡くした家族の話。
その死に対する家族それぞれの反応が描かれる。
ヨット事故の場に居合わせ、兄を差し置いて生き残ってしまった次男。彼は一番心の傷が表面に出てる。
なにか家族間に悪いことがあるたびに「僕のせいで…」と口癖のように繰り返す悲しい奴で、とにかく自罰的。自殺未遂を起こしていて、精神的に瀬戸際。俺はこいつに一番共感できた。
なんだかんだ結果的には一番救われてる、良かった。
長男を溺愛していた母親は、一見しっかり自分を立て直してるように見えるけど内心ガタガタ。次男に対する態度はどこか冷淡。
お気に入りの長男のようには次男を愛せなくて、その態度がさらに次男を追い詰める。
端的に言って嫌な女だけど、でも現実、自分の子だからって全ての子に平等に愛情注げるか?ってのは、あると思う。
やっぱ差は付けてしまうよなぁ、ってのは分かる。
この映画が、単純に母親を悪役にして叩きのめすような筋書きではないのも、その辺に対する作り手の理解やと思う。
母親が最終的に次男を愛せるようになる話なんかと思ってたら違った。
次男が、母親の愛情の限界を許せるようになるまでの話だった。その辺はちょっとハッとするものがあった。
親だからって無分別に我が子を愛せるわけでは無いって視点は斬新やったかも。
それも優秀で問題も少なかった方の子を。
お父さんは、すっげぇ気遣って家族に接してるストレスフルなポジション。
家族のなかで中間管理職みたいな事やらされてて一番可哀想な感じした。
最後、いつまでも次男に心を開けない妻についに言ってしまう本音がなかなかツライ。
君の愛は長男と一緒に死んでしまった。って言葉が哀し過ぎた。
まったくもってハッピーエンドではないし、観たあと何の気力も沸いてこないけど、ええ映画観たって気にはなったわ!