ゆーさく

銀河鉄道の父のゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

序盤から中盤までは、人物像を説明するための、言うてるだけのセリフばっかりで、うわぁ…邦画の悪いとこ出てるわ!って思ってもうて、正直全然良くなかった。

けど賢治が病床のトシのために物語を書き始めた辺りから徐々にノッてきて、最終的には結構良い雰囲気映画になってたと思う。



序盤は何ていうか、わざとらしい、作り物に見えるシーンの連続で嫌やった。

母が言う「賢治はあなたに褒めてもらいたいんじゃないかしら」ってセリフとか、一体母は賢治のどこ見てそう思ったのか?

父の商いに反発して、父の言うことにことごとくノーを突き付ける賢治のあの様子のどこにそんな要素を見て取ったのか、まったく謎やった。

だからあのセリフ、ホンマに“展開のために言うてるだけのセリフ”に聞こえてしまった。
クライマックスの賢治の最期のシーンで言う「父上にやっと褒めてもらえた」ってセリフを効かすためだけの。

そういう設定のために言うてるだけやんって。



妹のトシの言動も何だか、その「聡明で芯の強い」という人物像を説明するためにわざわざ言わされてるセリフ、作られてるシーンという風に思えて、わざとらしくていけ好かなかった。

賢治の進学に反対する政次郎を「新しい時代の父親」という言葉でノせて進学を後押しするシーンとか特にそう。
トシが「賢くて兄想い」な人物であると説明するだけのシーンになってる。

セリフは平板で何の情緒も無く、第一何でそんな言葉で政次郎が説得されちゃってんのかも分からない。
そんなファジーな煽てで息子の進学を許す?なんで?
政次郎が煽てられたらホイホイ乗っちゃうバカな奴みたいに見えてくる。

妹のキャラを説明してるだけで、まったく情緒的に豊かじゃないし、リアリティもない。

認知症で暴れる祖父にビンタ張って「綺麗に死ね!」も意味分からんかった。そんなことしちゃダメだろ、としか思わんかった。

その直後に抱きしめて、大丈夫愛してるから、みたいなこと言うのも、ドラマチックにそれっぽい事言うてるだけやなぁって思ってもうた。

このシーンもやっぱり「芯が強く、時にエキセントリックな行動も取れて、愛情深い」というトシの役柄を説明してるだけに思える。

そこに先駆けての積み上がったドラマも無く、感情の流れも無く、ただ見せただけ、説明しちゃってるだけのシーンになってる。

トシは痴呆で暴れる祖父のことをどう思ってたの?
哀れに思ってた?あきらめてた?嫌だった?怖かった?大好きなお爺ちゃんが変わっていくのが悲しかった?

どういう感情から出てきた「綺麗に死ね!」とビンタなのかが読み取れない。


青年期の賢治の描写で思ったんやけど賢治って発達障害なんかな?ってちょっと思った。
時代が時代でそういう言い方をあんまりされてなかったかも知れないけど。

特に日蓮宗への傾倒のくだりあたりから、明らかに社会常識が足りてない行動とるし、受け答えも情緒も安定してない。一つの考えに捉われて思い詰めると動けなくなるとことか、そうやろ。

当時じゃなく現代の医療で診察受けたら、たぶんそうなんじゃないかな。


賢治がいわゆる鼻つまみ者みたいな扱いから、徐々に人々の信頼を得て頼られるような落ち着いた人間になっていくのは、年を経て大人になったからとか、知識を得たからとか以上に、身体が元気じゃなくなって、落ち着かざるを得なかったって点が一番大きいんじゃないかねぇ。。。
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