minaduki

グリーンマイルのminadukiのレビュー・感想・評価

グリーンマイル(1999年製作の映画)
2.5
観たつもりになってたけど観てなかった映画をやっと観た篇その2

いゃ〜困った 一月も前に配信で観たのだが、どう感じていいものか、自分の中のどの引き出しに残すべきなのか悩みに悩んで今日まで引っ張ってしまった
それ以来、他の映画も何となく遠ざけてしまった
この映画がトラウマになったのかもしれない
音楽ばかりを聴いていた
映画は強いメディアだ 
強すぎるよ

でもこれ以上間を空けると益々書けなくなるし、観れなくなるし、早く書いて葬ってしまわないと、
えいやとここで書いてしまおう


私の悩ましさはこの映画の素性が捉えられないことなのだ
誤解を恐れず書きますと、これはかなり悪趣味なものではないかという思い
死刑という極めてシビアな問題を、更には冤罪を、ファンタジーの砂糖をふり、ホラーのスパイスを効かせて観せていいのかしら
これは巧妙に仕立ててはいるけれど、通俗で悪趣味な映画ではないかしら
いやいやそうではなくて、賛否のある死刑制度だからこそ、その殺傷の瞬間を含めしっかりと撮り、更にドラマチックに味付けしてたくさんの人に観てもらい、考えてもらいたいという志の高い映画なのかしら

未決囚拘置所、緑色の廊下の向こうは刑場、看守は死刑執行人、情を繋いだ者でも淡々と執行する、彼らのプロ意識のありよう、電気椅子、執行の微細な描写、それを見ながら地獄の劫火で焼かれるがいいと呪いの言葉を投げる被害者遺族、故意のトラブルにより通常よりも何倍も苦しみ絶命する様子、刑場に立ちこめる遺体の焼き焦げる匂い、転調、キリストのように奇跡を起こして瀕死の病人を蘇生させる死刑囚、そして冤罪、処刑を受け入れる冤罪者、それを知りつつ執行する主人公
ざっとエピソードを並べただけで、これ以上強いプロットはないと思える
落差の大きい、最強の表現だと思う

映画は作り物である
物語である
何をどう描こうと作家の自由である
だから面白いし、故に尊い
ということは百も承知の上で、この映画が俗悪でもアートでも社会派でもファンタジーでもホラーでももうどうでもよくて、見終わった後、僕はこの映画を思い出したくないし、二度と観たくない、
好きな人に勧めたくないと思ってしまったということだ
これは物凄く個人的な僕の感情で、この映画は表現物としてとても強いし、プロの見事な仕事で賞賛する人がたくさんいるのも知っている
その上で僕の中に残ったのは、
表現技術は最高、でも表現の質は?どうなのかなということ

僕の心の映画箱の中でこの映画と同じ場所に既に入っていているのが何本かある
『オールドボーイ』
傑作だと思うが、観終わった後吐き気がした、もう二度と観たくない
『エレファントマン』
これはゲテモノ箱
再見しても良いが、今見る意味は余りない
『ダンサーインザダーク』
もう一度観るには相当なエネルギーがいるだろうけど、美しい映画だと思う、そこに縋って観れるかも
同じ作家の『奇跡の海』はとても好きな映画で何度でも観たいし、好きな人に勧めたい

『グリーンマイル』は僕の中で『オールドボーイ』を超えた
二度と観たくない映画ベストワンになった
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