このレビューはネタバレを含みます
戦争は全ての人間性を圧殺するような巨大な残酷さに満ちているが、どんな苛烈な環境にあろうとも、人の心には決して消し去ることのできない、小さな暖かな炎が“ほかげ”のように灯っている
人間の最後の善性を信じて訴えかけた良心作
仄暗い中の一点のほのかな灯り、そこから発する温もりが強烈に伝わってきました 陰惨な部分もありますがそれだけではありません
最初は『ゆきゆきて、神軍』を思い出しましたが、この映画の意図は更にその先を描くことだと徐々に気がつきます
だってタイトルが“ほかげ“ですものね
人が生きていくには、人間の捨てるに捨てられない善性を信じることだと受け取りました
以下ネタバレ
3部構成になっている
1部、自らの罪を他に転嫁できない、全てを背負い込んでしまった元小学教師の復員兵が精神を病み破滅する
2部、夫が戦死し、息子を空襲で亡くして全てを失った女は、体を売るその日暮らしの絶望の中で、偶然迷い込んできた孤児の少年により、かつての家族の温もりを懐かしく切なく思い出す
3部、戦場で戦友を上官により罪なき罪で処刑された帰還兵は、命令され自らも処刑を執行した後悔と復讐を胸に、復員後上官を訪ね、戦友の無念を晴らす為、自らの戦争を終わらせる為に銃弾を撃ち込む
以下メモ書き
95分にまとめた脚本の潔さ
録音が思いっきり良くない
滑舌のせいもあり聞き取れない箇所が数箇所
そんな中でセリフを見事に通しきった森山未來の立派さ
少年に狂言回しをやらせる演出の勇気、それに応えて見事にやってのけた子役の見事さ
カメラ、サイズ感、移動共に心地よい
趣里、少年のアップの強さ 暗い室内からデイシーンオープンへのカットがわりの気持ちよさ
照明が良くない
暗部の階調が今ひとつ出ていればと残念