円柱野郎

戦火の馬の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

戦火の馬(2011年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

英国生まれの馬が、売られたり徴用されたり敵の手に渡ったり…と数奇な運命をたどるのだけど、その場面場面で飼い主や世話をする人たちがショートストーリーで描かれていきます。
なのでなんとなくオムニバス的な雰囲気もする映画だった。
そういう変遷を経て、最初の飼い主に帰っていくという奇跡…、まさに第一次大戦の真っただ中を駆け抜けてなお無事だった、という奇跡のストーリーにはじんわりと感動する。
出来過ぎと思わば思えと言わんばかりのファンタジーではあるけど良いんじゃないかな。

奇跡の馬の話とは別に、演出面ではずいぶんとスピルバーグの趣味が出ていると思う。
ずいぶんとクラシック映画…「風と共に去りぬ」や「西部戦線異状なし」を思い起こさせる雰囲気もあった。
まあ、後者は舞台からしてもろに「西部戦線~」なんだが、ただ戦場を描いてはいるけど悲惨な感じはそこまで感じない。
死屍累々な場面もあるけど「プライベート・ライアン」の様なエグさがないのは、本質的に描きたいものが違うからだろうか。

第一次大戦は戦争の形態が大きく変わった戦争だけど、序盤の騎馬突撃をする英軍から、機関銃で応戦する独軍→塹壕戦→毒ガス→戦車登場…と戦闘の変化を意識的に登場させている。
そんな中、塹壕でにらみ合う中間線で英軍と独軍の兵士が二人で行った共同作業…、この馬が生み出した戦場の奇跡という場面が俺の一番のお気に入りです。
やはり敵を描いているんじゃなくて戦場を駆けた馬の映画だから、そういった一見ありえなさそうな場面でも素直に受け入れてしまう。
惜しむらくは、ドイツ軍もフランス人も、ほとんど英語を使っているところが気になるけど…、まあここでは言うまい。
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