ピロシキ

ソドムの市のピロシキのレビュー・感想・評価

ソドムの市(1975年製作の映画)
4.0
ついに観てしまった。ウンコはまだしも、やっぱり最もショックが強いのはラスト5分のシーンだった。罪のない無垢で美しい市民が、権力者から一方的に弄ばれ、虐げられる光景。そしてこのあとパゾリーニ監督が(まるで劇中における弱者のように)何者かに惨殺されてしまうという事実が、何よりもこの作品が放つ異様なオーラを増幅させている。

まず舞台を「1944-45年のドイツ」に据えているっていう時点でかなり批判的だし、ファシズムに対するあからさまな風刺は見て取れる。残念なのは、半世紀を経ても、これが昔話にもフィクションにもなっていないという現実があること。世界のどんな片隅も、戦場になり得る。ほんとうに、いつまでも最も残酷なのは人間なのだ。熱狂してはならない、興奮してはならない。この映画は、正しく否定されなければならない。人間として「暴力に対して正常に嫌悪感を覚えるか」を測る試金石のような作品。それは、本作をお気に入りに挙げるミヒャエル・ハネケが、まさに自身のキャリアを通して表現してきたことではなかったか。

ただし映画としては「ババアの長話がいちばんの拷問」という、普遍的な教訓も含む。あー観てしまったよ、もう!
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