ピロシキ

コロッサル・ユースのピロシキのレビュー・感想・評価

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)
4.4
Amazonで4,0000円超えの廃盤DVDを買うべきか否か、迷った末にようやく再上映の機会を見つける。面白かったとか以前にとにかく「みた…!」って感じである。ご飯食べてから観たら絶対寝るという確信があったため、ほどよく絶食して迎えた、至高の映像体験。なんか自分でもビックリするほどバッキバキだった。初めこそ「ここから2時間半か…」と身構えたものの、終幕の頃には「もう2時間半か…」と少しの名残り惜しさすら感じる程度であった。

光と影が制御されたガンギマリのショットに、抑制された演出。とっつきにくいったらありゃしないが、紐解いてみれば「おっかさん、家出しちまってよお」と子どもたちにボヤく親父を追いかける、めちゃくちゃ無骨なホームドラマといえなくもない。誰よりもかわいい、ヴァンダの娘ちゃん。汚い言葉で毒づきながらも、なんだかんだでやっぱり娘の話ばっかりしちゃってる母ヴァンダ。そして、町中ウロウロしながらも結局ヴァンダの部屋にしょっちゅう居着いちゃう、父ヴェントゥーラ。

常にフィックスだったカメラが、終盤ついにヌルっと動き出す瞬間。止まっていた時計が動きを取り戻すかのような(たぶん)象徴的なシーン。コロッサル・ユース。巨大な若さ、とでも訳そうか。祖国での過去を嘆き、孤独な現在を憂うあいだにも、時計は確実に1秒先の未来へと進む。若者よ自由を叫べ。若者よ前向いて進め。という感じだろうか。とにかく結論、個人的にペドロ・コスタ作品のベストである。

DVDのジャケットにもなっているあのスタイリッシュなイメージ、まさかの「内見に来た親父、不動産業者を待つ」だったとは。
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