ナガノヤスユ記

恐怖のメロディのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

恐怖のメロディ(1971年製作の映画)
4.6
何度見ても、見るたびいい。これが一番いいという気さえしてくる。これが良すぎて逆に、その後しばらくサスペンスジャンルから遠のいたのではとも思える、初監督作にしてお手本のようなサイコスリラー。めっちゃヒッチコック。というのも最早失礼。そして、イブリン、マデリン、アナベル、すべてポー。海岸沿いのカップル (デイブとトビー) の会話、ありえない時間の流れ方でゾクゾクするわ。そして終盤、モントレー・ジャズ・フェスティバルに割かれるありえない尺と熱量のバランス。あれが一番狂ってる。自らの身体を徹底的に痛めつけることで相手を超えようとするイーストウッドの自虐の美学。暴力。「狂気」でも「愛」でも呼びかたはなんでもいい。人間精神のいびつさを安直な二項対立で都合よく解釈しようとする者への痛烈な逆照射。多面鏡。心を折られたイーストウッドの眼差しから眼差しへのオーバーラップ、あれをアテに酒が飲める。