KANA

ディーバのKANAのレビュー・感想・評価

ディーバ(1981年製作の映画)
3.7

昔、流行りに乗って片っ端から観たミニシアター作品群のうちの一本。
ジャン=ジャック・べネックスの長編デビュー作。

アルバムをリリースしない主義のオペラ歌手、シンシアに心酔する郵便配達の青年ジュールはコンサートで彼女のアリアを無断録音する。
その結果、海賊版販売を狙う悪徳業者につきまとわれ、巡り合わせから犯罪組織にも追われることに…

何より映像が素敵!
ジュールが住んでいる元自動車工場の部屋、ひょんな事から知り合いになる男ゴロディッシュの部屋、どちらも薄暗さの中に幻想的なライティングが映えてそれぞれアートギャラリーのような空間。
靄のかかった夜明けのパリの街を散策するカットは息を呑むほど美しい。
いすれもブルーが魅惑的に効いてて、こういうスタイリッシュな映像感覚がいかにもネオ・ヌーヴェルヴァーグ。

ゴロディッシュと同居するベトナム人少女アルバの、あどけないのにミステリアスな雰囲気にも惹きつけられる。
髪がサラサラツヤツヤ。
ジュールに恋するかしないか、絶妙な匙加減のオリエンタルロリータ。

改めて観ると、中盤の追っ手2組側の諸事情描写はかなり冗長に感じてしまった。
個人的に、どこか安っぽさが漂うこのサスペンスパートはそんなに要らない。
ただ、ジュールがオートバイでメトロ構内を駆け抜けながら逃げるアクションシーンはかなりエキサイティング!メリハリを効かせてる。

無観客のオペラハウスでシンシアが神秘的な歌声を響かせるラストシーンは芸術的。
気弱なジュールと、どっしり構えた気高いディーバのアンバランスな組み合わせ。そのぎこちなさがいい。
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