KANA

西鶴一代女のKANAのレビュー・感想・評価

西鶴一代女(1952年製作の映画)
4.2

今年は溝口健二を開拓したいなぁと思ってて、遅ればせながらようやく1本目。

井原西鶴の『好色一代女』をもとに、映画としてのダイナミックな脚色を加えた作品。
監督は本作に全身全霊を打ち込んだそう。

江戸時代、御所勤めをしていた若くて美しい娘、お春(田中絹代)が様々な男たちに翻弄されながら転落していく人生を回想形式で描く。

いやぁ、なんて壮絶で不憫な運命!
金や名誉で判断するのでなく、男が自分を愛する限り、あくまでもその男との愛を信じて生きてきただけなのに。
やっと掴んだ幸せを次の不幸にかき消される、の繰り返し。

家柄を重んじ過ぎる封建社会の風潮といい女性に対するモノ扱いといい、観てるとムカムカしてくる一方、そんな生身の人間たちの赤裸々描写に強く惹きつけられた。
あらゆる角度での流れるような長回しが随所で効いてて没入してしまう。

お春のアップダウンの激しい人生を眺めてると、

諸行無常
人間万事塞翁が馬

ということをつくづく感じる。

リアリズムを追求していながら、羅漢像のシーン、竹藪のシーンなど、とても神秘的でもある。
そして女性に焦点を当ててるだけあって着物が美しい。
晴れ着とか芸術としてでなく、ナマの風俗としてのこなれた美を感じた。
時代考証も徹底してるようで、そういう意味ではカラーで観たかった。

高貴な娘、殿の側室、遊女(太夫)、女中、扇屋の妻、尼、物乞い、夜鷹…と、
10代〜50代のお春を演じた田中絹代、素晴らしい!
必死に我が子を追いかける姿が忘れられない…。
境遇に虐げられた末の開き直った無の境地のようなラストシーンは、決して後悔などしていない強い自我を感じる。

ゴダールがミゾグチに夢中になったわけが少しだけわかった気がする。


p.s.序盤の若党役の三船敏郎、小綺麗で爽やかでスマートで、らしくなくて新鮮だった笑
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