Oto

50回目のファースト・キスのOtoのレビュー・感想・評価

50回目のファースト・キス(2004年製作の映画)
3.9
コメディを学ぶ期間。「説明と気付かせない説明」に長けてる作品で、手数の多さによって退屈な時間を作らないことが常に意識されている。

opの台詞割りから飽きさせない演出で、仕事や船についてもギャグ・ドキュメンタリー風映像・水槽のトランジションなどを交えて楽しく伝える、彼女との出会いも小道具(ナイフやワッフル)で描写するなど、冒頭の10分から飛ばしてる。セイウチやペンギン、変な同僚とかモブの描き方も良い。
そこからも、彼女の秘密に気づく、ナンパに懲りるなど、ドラマ(変化)が続くので面白い。壁を白く塗るとか、セイウチのリアクションとのシンクロとか、非言語的に切なさや面白さを伝えるのが上手。
彼女に大きな枷がある分、周りの人間(父と弟)の信頼を得て関係が変わっていくというのがミソだな〜と思った。

基本的に騙しは2回重ねるのが正攻法。文字を読めない芝居がバレている、お祖父ちゃんが感電で死んだなど。脚本が良いのもあるけどアダムサンドラーやっぱ良い役者だ。。「嘘とわかる嘘はすごい」とケンコバさんとかみててよく思うけど、ヘンリーみたいなユーモアがほしいな〜と切に感じた。

「1日で記憶がなくなる」を「同じ日を繰り返す」と変換する発想がそもそもナイスで、前提として"そもそも家族が同じ日を用意してあげるのがおかしくない?"とか"バラしたらショックでおかしくなるのか?寝なかったらどうなる?"みたいな疑問は生まれるんだけど、そこを軽やかにかわしていく程度の整合性は持っている。さらにはそれを逆手にとって「映像の力」を使って彼女の毎日をアシストする。『アパートの鍵』
でも思ったけど、こういうリアリティがコメディは非常に大事。
事故シーンまでパイナップル使ってコミカルに描いたり10秒で忘れる男をギャグとして使ったり倫理的にグレーなところもあるけど、シックスセンスの使い方とかめっちゃ好き。日本語が下手なのはさめるのでキャスティングちゃんとしてほしいけど。

Twitterで話題の「伏線」問題。伏線が芸の一つに過ぎないというのはその通りで囚われ過ぎるのは良くないとは思うものの、その上でやっぱり伏線が巧みな作品が好きだし、伏線から完全に逃れて面白いドラマを作ることなんてできないと思う。本筋じゃないところが面白くなりがちなタランティーノとかジャームッシュだってベタは守っているし、地味とか言われがちな小津や成瀬だって反復によるドラマは作っているし、それこそ伏線を完全に諦めてしまったらただ点が散らばっただけの"映像"にとどまるだけで映画にはならないと思う。
本作でいうと、ルーシーが発する光、友達の腹の傷や目、夢精、受付の"覚えてない"、などは効果的。もちろん回収されなくて良い伏線もたくさんあると思うけど、(適切なタイミングと回数で)回収されるべき伏線は必ずあると思った。
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