アキ

アーティストのアキのレビュー・感想・評価

アーティスト(2011年製作の映画)
4.9
主役二人、ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョの2人が素晴らしすぎる。
浅薄にもこの映画を見るまでは全く持って顔も名前も知らなかったわけであるが、この二人の全ては鮮烈に人の心を焦がし支配する力を持っているのは確かだろうね。

ジャンデュジャルダンのあの筋肉を随意的にコントロールできる圧倒的柔らかさは何なのか、眉毛を右上がりにも下がりにもクイクイと調節しうるユーモラス、 怒りにかられ炎を宿した眼は悲しみに濡れると途端に目じりが下がり、瞳に憂いの雫を忍ばせる。作中、ペピーの人気を尻目に凋落甚だしく闇を彷徨うしかないジョージが、ふと足を運んだ劇場、スクリーンの中楽しそうに役を演じている彼女を少しはにかみながら眺め、わずかに嬉しそうに顔をほころばす表情に思わず釘付けになる。

対するベレニスベジョももう言葉は無い。
世界中の嬉々がその表情に集約されているかのような溌剌とした笑顔、まるで顔の周囲に星々が踊っているかのように笑うと瞬間にして周囲一帯を明るさに包む充満するエネルギー。跳ねればそのまま上空50メートルにまで飛んで行ってしまうかのような跳躍、瞬発を内包した柔らかな体も素晴らしい。
役をゲットするためにオーディションで小粋なステップを踏むシーンはまさにもう爛々としてまばゆく、魅入る。

サイレント映画は初めてだったけど、その出会いのシーンから凋落、再起に至るまで全部完璧!
これほどまでの完成度を誇る作品がサイレント映画のスタンダードであるなら、表現においてトーキーが勝てる一分の隙も無いのではないか?
セリフが無いからこそにじみ出てくるあらゆる含意。

震えた映画。

素晴らしい!
アキ

アキ