こたつむり

ねらわれた学園のこたつむりのレビュー・感想・評価

ねらわれた学園(1981年製作の映画)
2.7
♪ So,you don’t have to worry,worry
  守ってあげたい
  あなたを苦しめる全てのことから

これぞまさに青春グラフィティ。
というか、大林監督は「映像の魔術師」と呼ばれていたようですが、本作に限って言えば「青春ラクガキ野郎」の方が相応しいですね。要はポスカでチェキをデコるギャルと同じ。

特に終盤の脱力具合はクラゲも真っ青。
言葉を選ばずに言うならば、映画ではなく“学芸会”。下手したら、イマドキの学園祭のほうが洗練されているかもしれません。

だから“突き抜けて”いるとも言えます。
今では角川映画も大林監督も“大御所”ですが、当時は“新参者”。周りの目を気にせず、挑戦した結果だと捉えれば、このボヤッとした感覚も愛おしく思える…はず。

あと、本作の見どころは薬師丸ひろ子さん。
大林監督は理想が投影したのでしょうが、彼女の躍動感が勝っていて、とてもアンバランスな雰囲気でした。薬師丸ひろ子さんが一世風靡したのも頷けます。

やはり、不安定だと気になるんですよね。
これが『時をかける少女』になると、原田知世さんが監督の理想を具現化しちゃいますので、切なさがハジけて“違う意味で”一歩踏み出したくなるんですが。

この辺りを比較して楽しめるのは現代の特権。
失笑を禁じ得ない演出ばかりですが、歴史を学ぶように捉えれば許容範囲内だと思います。

まあ、そんなわけで。
異質な出来栄えだからこそ浮かび上がる大林監督の本質。何処まで行っても“青春小僧”な純真さを観ることができるのが興味深い作品でした。勿論、面白いかどうかは…別の話ですが。

最後に余談として。
僕の中で『ねらわれた学園』と言えば、原田知世さんが主演だった1982年版。夕方の再放送を観ていた世代なのです。

そのときに高見沢みちるを演じたのは伊藤かずえさん。本作は長谷川真砂美さんが演じましたが、雰囲気がそっくりだったので驚きました。思い返せば、伊藤かずえさんは“ライバル”役が多い印象。今では貴重な存在感ですよね。
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