HicK

ハリー・ポッターと謎のプリンスのHicKのレビュー・感想・評価

3.7
《シックでサスペンス色の強いミステリー回帰作。でも少し物足りない》

【好きだが快作とはいかない】
公開当初は「んー」と思っていた今作。それでも1、2作目で描いてきた謎解きミステリー要素が戻ってきた事に有り難みを感じ、何度か見るうちに好きな作品の一つになった。3、4、5作目のように目立つアクションは無いので好き嫌いが分かれるかもしれない。また、この原作は読んでいないがファンの友人曰く、"一番はしおられた作品"のようで、その割にはテンポが遅く、見合わない内容の薄さも感じる。

【目立つサスペンス演出】
画質が今までに増してとてもシック。色合いをかなり抑え、サスペンスフルなシーンはよりモノトーンに近い色で冷たさまで感じる。背景のピントを極端にぼやかせ、被写体は滑らかで柔らかい。無論、時々「夢の中のシーンか?」と思ってしまうほど淡くぼやけていたので、やりすぎに思ってしまった所もある。しかしワンシーンワンシーンがフォトジェニックで見入ってしまった。特にダンブルドアが洞窟の水を飲み干すシーンはモノトーンに落とされ、カメラワークやライティング演出もあってサスペンスそのものだった。

【ドラコの急展開】
物語上のサスペンス感をより一層高めていたキャラがドラコだった。個人的には好きだったが、どうしても今までのコメディーリリーフからの突然のシリアスモードで、正直、違和感しかない。本音を言えばもう少し徐々に描いてもらいたかった。

【ロン…】
そんなシリアスづくしの物語に時より挟まれるロンという休憩(笑)。んー、もう少し控えめでも良かったかもしれない。ただでさえコメディーと相性の悪い作風で、かなりコントに近いバカップルシーンが沢山あるのでミスマッチ。しかもロンとハーマイオニーのすれ違いは前にも描いていたのでそこまで試練を与えなくてもいいかなと感じたが、今作のコメディーシーンのセリフはどれも秀逸。よく笑った。

【スネイプ様】
演技面でピンポイントに好きだったのが、佳境でスネイプが発した「アバラカタバラ」の声。震えているのかいないのかという絶妙な具合でその一言から様々な心情を感じ、鳥肌が立った。スネイプ様、最高。

【少し物足りないミステリー】
今作は謎解きミステリーとは言っても、最初から解く方法は分かっていて、『先生からトム・リドルに何を教えたのか聞く』という目的だけ。会話劇の面白さはありつつも、ミステリー作品として見ると少し物足りない。

【総括】
アクションの少なさから人によっては退屈に感じるかもしれないが、個人的にハリーポッターの醍醐味は今作のようなミステリー要素にあると思っているので、このダークでサスペンスフルな謎解きメインの作風は好きだった。原作はとびとびでしか読んでいないので、一層小説への興味が湧いた作品。
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