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長い散歩のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

長い散歩(2006年製作の映画)
3.9


“警察ならちゃんと調べろ
誰が本当の犯罪者か”




拭えない過去を背負ったまま人生の精算的な末路を捲りはじめた初老男のエゴイストな贖罪と、受けた育ちを言い訳にして自身の母親道もまた破滅の一途を辿るネグレストな女。
奇しくも隣人同士となった大人たちの狭間で力のない奇声とも言える悲鳴を上げる天使の羽を背負った少女。


大人たちの身勝手な人生の断片を、ひとりの無垢な少女を介して描くヒューマンドラマを主軸に置いたクライムロードムービー。

テイストは【八日目の蝉】に似ている。



奥田瑛二監督作品3作目。
自身も刑事役で出演。

緒形拳も高岡早紀も松田翔太も津川雅彦も、そして奥田瑛二も、皆さん素晴らしい演技。

がしかし、
それらの演技派たちの見せ場を子役の杉浦花菜が全部かっさらっている。
少なめのセリフで狂気に溢れた心の叫びと大人たちへの睨みに恐ろしく身震いしてしまう。
小さな彼女の一つ一つの立ち居振る舞いや地獄の中の天使の絵面だけで、この作品の価値や意義へのエビデンスとなっているため、その他の淡々とした旅路や風光明媚が一層背景としてのコントラストとしてバランスが絶妙で、奥田瑛二監督のアーティスティックな才を悉く見せ付けられる。


松田翔太の登場で少し雰囲気が変わる点もプライマリーブリッジのような手法で効果的だが、あの落とし所は個人的にはあまり好きではないかな、、、
もう少しポジティブなシーケンスにして欲しかったなぁと。



ロードムービーとして、愛知や岐阜界隈を一緒に旅している気分になれるし、親子とは?本当の愛情とは?と言った普遍的な人生論も深く考えさせられる作品なので、癒しと共に啓発的な意味合いも持ち合わせている本作は、数年に一度は繰り返して観る価値はあるのかな。






P.S.
安藤さくらの無駄遣いよ、、、
さすがファミリーだわ。
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