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エル・スールのryosukeのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
4.5
2017/08/26 02:09 filmarks投稿
序盤の部屋に少しずつ光が差し込んでくる場面が印象的。全編に渡り光と影のコントラストが美しい映画である。
家族と暮らしていながらも孤独であり、密かに過去の記憶を懐かしんでいる父親の思いを考えると胸が痛む。娘とのぎこちない食事シーンはいたたまれない気分になった。
ビクトル・エリセは亡くなる前にもう一本長編を撮ってくれるのだろうか...

再見 2019/1/30 新文芸坐 4.1→4.5
初見の際、同時上映の「ミツバチのささやき」に衝撃を受けすぎてちょっと印象が薄くなっていたが、こちらもやはり傑作。「マルメロの陽光」もスクリーンで見たいのだがいつになることやら...
ファーストカット、タイトルバックに光が差し込んでくる描写を初めとして、光と闇の効果的な使用が素晴らしい。顔が光と闇でくっきりと分かたれる。冒頭、画面右に窓が浮かび上がってくる瞬間はやはりスクリーンで見るべきだな。
続けてみると「ミツバチのささやき」との類似点が浮かび上がってきた。共に親が遠くにいる想い人に手紙を出し、モノクロ映画を見るシーンがあり、乳母、使用人の名前が「ミラグロス」。
ヒッチコックのポスターが映されることからエリセのアメリカ映画への愛を感じる。
聖体拝受後のダンスシーンで二人と共に踊るようなカメラワークも素晴らしい。
ベッドの下に隠れるエストレリャが愛らしかった。ちょっとイサベル思い出すんだよな。口元かな。
ラスト間際のカフェのシーンは本当に胸を締め付けられる。聖体拝受の美しい思い出についての娘のリアクションは彼の死の原因の一つでもおかしくないだろう。悲しいすれ違いだった。誰もいないカフェの隅にポツンと座る父親の画が目に焼きつく。
祖父を逃れて北へとやってきた父の残像を追いかけて、娘は今度は南へ向かうことになる。
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