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デューン 砂の惑星PART2のryosukeのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.3
 退屈極まりない前作の体たらくのせいでほとんど期待していなかったのだが、あまりにIMDBのスコア等が高いのでしぶしぶ鑑賞したところ、驚くほどにクオリティが上がった続編だった。これだけ飛躍的に面白くなる続編というのも珍しいのではないか。冒頭のシーン、前作では意図的なのかと思うほどに剥ぎ取られていたサスペンスがきっちり組み立てられ、パート1では画の単調さに直結していた砂漠のだだっ広い光景をダイナミックに見せていく上下の空間構築に期待が高まる。敵兵が砂上からスッと浮き上がり宙を滑っていく動きの魅力。全体的には、予知夢絡みのモヤモヤしたイメージで遅滞する点等は前作と同じだが、本作は合間合間の見せ場に威力があり、必ず外さないので全く問題なく見ていられる。
 タコのようなメカの足の動きに合わせて隠れ、戦闘機の一瞬の隙をついてレーザーを撃ち込む戦闘も本シリーズ独自のものだと思えて楽しい。戦闘のアイデア自体が実に面白くなった。ハルコンネン軍の兵士が、砂煙の中で暗躍する人影に次々に刈り取られ、一転ラッバーンたちが退却を始めると背景に爆炎が上がり、滑らかに空へと舞台が移り変わる中でラッバーンの陰からフレメンの兵士が現れ、シームレスに空中の戦闘へと移行する。美しい流れだ。
 砂漠の急斜面の画が面白いカットに始まる、ポールが初めてサンドワームを乗りこなすシーン。砂上のサーフィンの躍動感、オリジナリティも見事なものだ。『アバター』もそうだったが、異界の動物を乗りこなすことで仲間になるというのは一つの類型なのだろう。前作では消化不良だったサンドワームの凶悪な魅力も光っている。大俯瞰ショットの中で巨大な砂嵐に突っ込んでいく姿や、三体で雁首揃えて皇帝軍に突っ込まんと色めき立つ勇姿。
 単に壮大なだけでセンス・オブ・ワンダーもアイデアもないと思ってしまった前作の画作りだが、パート2はその点も文句なし。サナギのような奇妙な形態の戦艦?がタブールを爆撃する超ロングショットから、巨大建築物の内部にカメラポジションが移行し、内側から崩落を捉えるダイナミックなカット構成。モノクロの闘技場は超現実的な趣すらある狂気の空間に仕上がっており、舞台装置に負けじと狂った笑みを浮かべるフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー素晴らしいな)も見事。鉄板が飛来して張り付くユニークな地雷や、皇帝軍を運んでくる、鏡張りの球体が砂漠の光景を反射する飛行物体など視覚的に面白い。ダルいはずの予知夢にも、砂漠と海の接合という魅力的なイメージを用意してくれたりする。あっさりとした祖父殺しの後に戦場の上空を舞うカメラの高揚感。
 前作では実に鈍い印象だったアクション描写も大幅に改善された。シールドという動きがボヤける要素を排除したのも大きいのだろう。フェイド=ラウサとの決闘など、見やすくかつ切れ味のあるシンプルに魅力的なアクションに仕上がっていた。前作を見た時にはここで切ろうかとも思ったのだが、何が起こったのかテンポの鈍さが残存している以外はダメな要素が消滅してしまった。これは次作にも期待してしまう。
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