ryosuke

フォロウィング 25周年/HDレストア版のryosukeのレビュー・感想・評価

3.7
 複雑な物語を時系列シャッフルによって更に複雑にするノーランの手癖が、長編第一作にして既に存分に発揮されていることが確認できた。映画に相応しい複雑さの種類、程度からの逸脱という意味ではノーランの悪癖でもあるのだが、最初からやりたいことがこれだったのなら仕方がないのかもしれない。低予算の本作と大作を任せられるようになってからの作品において、これだけ一貫した骨があるのはノーランの映画「作家」としての証でもあろう。
 巨大予算の賜物であるデカいイメージの畳み掛けというもう一つのエンタメ的武器を手に入れた現在のノーラン作品と比べると、このスタイル特有の頭で考えてる感がより顕著になってしまうというのはある。時系列シャッフルによって意外な真相が明らかになっていく過程は間違いなく知的に面白くはあるのだが、どこまでいっても小説でも同じように実現できる面白さという趣で、映画にしかできないことを見せてほしいという映画ファンからすると......という感じ。過剰に込み入った陰謀には全くリアリティがないが、これは往年のフィルム・ノワールもそういうものであった。
 淡々としたクライムものだが、当然ブレッソンやメルヴィルのような研ぎ澄まされた厳粛さがある訳ではなく、フックのある撮影や演出も見当たらず、見終わってからピックアップしたくなるようなカットが存在しない。そうであるから、奇抜な設定も語り口も興味は惹くのだが、結局面白い「お話」でしたということで終わってしまう。
ryosuke

ryosuke