桃色

2001年宇宙の旅の桃色のレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
4.4
まだ少女の頃、最初に観たときの印象が今も変わらずに残っている。
2001年から20年以上を過ぎた現代だけどまだ未来の話に思えたね。

モノリスは何だという話を明確に言うことはできなけど、生命が大きくジャンプする変化をもたらす時に現れるものだってことはみんな誰でも気がついているはず。
人類の歴史は180万年といわれる(私の中学時代に習った記憶)
スペースオデッセイはその前のもっと昔の話からはじまった。
400万年前、最初に現れるのはまだ人類以前の猿人。道具を使うことを覚え有利に立つ(戦う)ことを覚えていく。
これが後の進化を我ら人類に与え賜うたモノリスの啓示だったんだ。

ここで1つ例を挙げておきたいんだけど、
「温故知新」という言葉があるけれど、古きを知ると「どうして?」って思うことがたくさんあるよね。
それはほぼ道具というものに現れる。
たとえば…
「青銅器時代」
土壌から銅を見つけ出し錫と合金して道具を作りだした。
銅の融点は1082度。これに錫を混ぜて青銅にするとなんと融点は875度と200度も低くなる。
要するに加工しやすくなると言うこと。
誰が気がついたの? 誰が発見したの?
それでも融点は800度台に落ちても普通の火だけでは溶けない。
ここに鞴(ふいご)と呼ばれるコンプレッサーで酸素を送って溶かしていく手法、そう鋳物。
誰が? どうやって?
考え過ぎてと眠れなくなっちゃう…って漫才にもなったけど本当に5,000年前の人類の叡智に驚くというより奇々怪々。
そういう不思議現象を、いつもモノリスに紐付けるとなんと便利なことか。
モノリスが人類(宇宙の生命体)に啓示を与えて進化を促したんだって思えば良いわけ。
少女の頃にこの映画に出会っているから、私はモノリス解釈が何度と繰り返させられて育ちました(笑ってください)

2001年
暗示的に月の地中から現れたモノリスは人類ではなくAIの進化を明示した,。
ミスをするのは全て人間。そうHAL9000というスーパーコンピュータに秘密を持たせたことが人間のミスだったのではないだろうか。
人間以上を期待した人間がAIに進化を委ねた格好だよね。
それを阻止し、最後混沌の中で自分の一生を走馬灯のようにみる宇宙飛行士ボーマン。
AIの暴走を阻止することでもう彼はもう神に領域にまで達したようだった。
モノリスが見守るのはその次の世なのか再生の過去なのか。

そう…簡単に言えばモノリスは知識の辞典のようなものなのである。
これを「アカシックレコード」と紐づけて考えてしまうのはまたまた少し深読みしすぎだとは思うけど、大不況の周期、戦争の周期、何故だか時代を眺めると宇宙が、地球が一つの生き物のように呼吸をしているように感じてしまう。

で、「アカシックレコード」という言葉だけど、SF好きな人や科学好きな人とお喋りをするとかなりの頻度で現れてくる単語。
というか
「アカシックレコードって聞いたことがある?」
って問いかけに頷いてくれることで同族の匂いが嗅ぎ分けられるというしろもの。
万物全てが起きうる順番で起こるものであるという神のデータベースという考えに近いかな。
これがなければそもそも数多の生物から人類が選び出されることもなかったのではと思えてしまう。
なぜ地球に?
なぜ人類が?
こういうなぜを全て偶然と言ってしまって良いの?

昨今、宇宙については驚くほど解明されてきたよね。
何度もレビューに登場する私の大好きなNHKのPSプレミアムの番組「コズミック・フロント」
我々の宇宙もお湯の沸騰時の泡の1つ。同じようなバブルは無数もある。
このいくつもある宇宙の1個体がそもそも生命体なんだよね。
バブルの中でどう変化するかは偶然によるものですぐに消滅するバブルもあれば長く存在するバブルもある。
でも所詮バブル。我々の宇宙もいつか消滅する。
そして驚くほど脳とよく似ている宇宙の構造。こういうことが最近どんどん分かって来た。

モノローグ
最後の銀河を見下ろす胎児はバブルのように発生と消滅をくり返す宇宙という「生命」の象徴。
モノリスは我々宇宙のシナプスのようなものかもしれない。
木星上空のモノリスを経由してさらに大きな観念の宇宙の塊に交信しているまさにニューロン構造なのだ。

これはまた、宇宙飛行士の生命の消失が我々の宇宙の消失に置き換えて捉えれば良いのかも…
手塚治虫の「火の鳥」でもマクロな視点とミクロな視点全てが永遠で一瞬であること...
イメージ=脳=宇宙といっていたよね。
「2001年宇宙の旅」はキューブリックがアーサー・C・クラークと描いた細胞的宇宙の物語だと思う。

ということで深掘りならず哲学的風に個人的見解で終わってしまうけど、きっと私が死ぬまでには答えが出なそうな宇宙の神秘に今も少女の時と同じようにワクワクしている私であります。

「アカシック・レコード」https://ja.wikipedia.org/wiki/アカシックレコード この辺りを参考にどうぞ。

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第2回 深読み合戦。
今回はuchiさんと黒猫ちゃんと3人で対戦(なんで対抗するのかなぁ 笑)
これも深読みせずに私的には素直に観てるんです。
こんな象徴的で抽象的な映画も少ないと思いますけど…それでも私の人生のバイブルであるのは間違いない。
数学と科学は更新のない学問(発見はあるけど)だと信じ今もその世界に魅了されている1人であります。
桃色

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