桃色

悪なき殺人の桃色のレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.2
タイトルがとても重要だと思うんだけど…どうしてこの邦題?

これでは見る側に要求されていないのにヒントを与えるようなもの。
原題はSeules Les Bêtes/Only the Animals
フランス語、英語とも「(その)動物だけ」って言ってる。
まさにその原題がぴったりだと思う。

映画の中で起こっているのは「失踪事件」
「殺人」を知っているのはモノ言えぬ動物たちのみ。
そのほかは見ている我々しか殺人を知らない。

冒頭の背負われた羊。階段を上りドアを叩く。
訪れた先は…後にわかるけど、この時の羊の目が見たもの。
ここにあるものが物語を練り合わせたってことなのかな。
要するに偶然に見せかけた必然であるように思えたね。

そして2匹の犬が登場してくるけど彼らも事件を目撃した証人。

手法は黒澤明監督の「羅生門」のように登場人物の視点で語られていく。
そう「最後の決闘裁判」でもそうだった。
アリス:とジョセフ、そしてミッシェル
ジョセフ:とイブリン(死体)
マリオン:とイブリン
アマンディーヌ:とミシェル
ただ、その人物の視点のさきにいる「あなた」をみんな自分の勝手な思い込みで見ていたね。
きっと寂しいんだろう、きっと愛しているんだろう、きっと憎んでいるんだろう、きっと、きっと…
そういう思いこみの一方通行ばかりだから真実が誰にも見えなかった。

「あなたはご主人を愛しているの? 愛し合っていれば問題ないわよ」
「偶然には勝てない」

意味深な言葉が彼らを取り巻く周りの人々からエッセンスのように振りかけられるけど、
「あなたとわたし」この二人称の枠を外し、それぞれが1人になった時にガラガラと物語が繋がっていいったね。
そして最後の締めのオチはもう唸るしかないほどの仕上がり。
死体がないからこの雪の街に春が来ても何も変わらない。美しい山の別荘の女主人が変わるだけ。
本当に素晴らしい映画だったな!面白かった!

この映画はネタバレ見ないで鑑賞するべきだと思うから今日は書きすぎないように気をつけたつもり。でも…

↓以下1行、勝手な考察によるカーテンめくり(要注意)






これ、やっぱり失踪女性の旦那さんがコートジボワールで黒魔術のサヌー師に祈祷してたんだな。多分…
桃色

桃色