桃色

メッセージの桃色のレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.2
「あなたの物語はこの日始まったと思ってた」

冒頭の短い少女の一生。
平和、喜び、悲しみ、絶望…
人類の一人ずつの人生に起こりうる様々がこの中に映し出されてた。

言語学者の第一人者として大学で教鞭を取りながら美しい湖畔の家で一人で暮らすの主人公。
ある日突然、世界12の都市に降りてきた謎の物体に世界中が大混乱になった。
流れ落ちる靄のような雲のなかに、鉄の鋳肌のような表面を持つ黒い巨大な物体のシェイプは見惚れるほど美しかったね。
『DUNE/デューン 砂の惑星』でも宇宙オデッセイアを美しいビジュアルで魅せてくれたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品。
なに?
なぜ?
未知と会話することで見つけられる答えは、今までのSFとはかなり違った謎解きを要求されたけど…
最後全部が繋がった時のスカッとさは格別だったね。
本当にお見事!素晴らしかった!

↓以下ネタバレで書きます。要注意








冒頭の
「記憶って不思議」
「いろんな見え方をする」
「人は時に流れに縛られて生きてるけど…」

そして目線が下がって広がるあの主人公の美しいリビング。
左側に天体望遠鏡。右のテーブルには2つのワングラス。

最後まで観ればわかる。これは主人公の未来の記憶。
そもそも未来が記憶できるはずがないという固定観念を捨てなさいと最初のモノローグは語っていたんだね。
天体望遠鏡は一緒に謎を解いたジェレミー・レナー扮する物理学者のイアンのもの。一時を過ごした《彼ら》の星を見ていたのかも。
そして夫婦となった二人の仲睦まじい様子が2つのワイングラスなんだ。

《彼ら》はルイーズを人類の中から選びだした。未来を記憶できる彼女だから。
後に彼女が出版するはずの「ヘプタポッド」文字の辞書があれば3000年後に起こる未来は明るいね。
ただ、この今を救わなければその未来はないというあたりにこの地球に果たして何を観ていたのかは気になるところ。
ただ、全てがすでに決まった順に起こるという『あれ』ではないかしら?
そう「アカシック・レコード」
(「アカシック・レコード」の話は…いつか書こうと思ってる「2001年宇宙の旅」に取っておきますけど気になる方は https://ja.wikipedia.org/wiki/アカシックレコード この辺りを参考にどうぞ)

もう一人のキーマンは中国のシャン将軍。
彼も時間の概念が違う1人。
「君が世界を一つにした」
「今知った。どう繋がるかわからないが…」
未来に「妻の最後の言葉」というジグソーのピースを渡しにやってくる。
積み木のようにバランスを取りながら積み上がった物語にゾワゾワとさせられた瞬間だったね。

イアンとルイーズと新しい命を誕生させる未来は「ここから始まる」最初に繋がってゆく。
何度も映し出された左指の結婚指輪はきっと「ママが悪い」未来を変えるはず。
彼女の記憶が修正を可能にするから。
たとえ病で娘を亡くすことになっても、それを夫婦共に支える選択にね。

そもそもこの黒い巨大な物体があの『2001年宇宙の旅』の「モノリス」を彷彿とさせられたのは私だけかな?
何か人類が大きくジャンプするような変化をもたらすときに現れるモノリス。
戸惑ったときに人類がどう選択するのかその象徴のようなものだった。

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いつも「ホラーに負けない会」にてご一緒させていただくuchiさん。
そもそも、オチをつけなくてもいいような映画まで裏返したり捲ったりしてオチをつけようとする私の悪い癖。
それに油を注いでくれるuchiさん。
この作品はuchiさんチョイスの深読み合戦。私が挑戦状を受けた形です!
いやぁ、そんな勝負なんて忘れて魅入りました。素直に受け止めて素直に余韻に浸れる素晴らしい作品でしたね。
桃色

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