桃色

男たちの挽歌の桃色のレビュー・感想・評価

男たちの挽歌(1986年製作の映画)
4.2
大好きで過去にシリーズ全て制覇済み。
でも再視聴するのは久しぶりかな。

「兄と弟」どの国でも繰り返し語られる家族のドラマ。
兄は弟と病気の父親の生活を支えるために「偽札」という裏家業で顔役までのしあっがってた。
ただ、その弟が警察官になる夢を叶えたことから父に諭され兄は足を洗おうとするんだけど…
よく言われることだけど、入るのは簡単でも抜けるのは難しいという裏社会。
ここでも靴底にべったりと張り付いたガムの如く、剥ぎ取ることに足掻く物語だったね。

とにかくこの兄のホー(ティ・ロン)は素晴らしい芯の通った惚れたくなるほどの男。
弟キット(レスリー・チャン)はというと、これまで支えてくれた兄への感謝など微塵もなく、警察での自分の立場が悪いのはヤクザの兄のせいだと不満ばかりのガキっちょ。
そして一世風靡の時代に盃を交わした(日本のヤクザ風表現)親友のマーク(チョウ・ユンファ)
家族がいない彼は守るものもないからその時その時に生きる刹那的なタイプ。
この3人が中心となって香港と台湾を舞台に、良い人1割&悪い奴9割で話が進んでいくのよ。

途中、必死に堅気に戻ろうとするホーを信じ、彼を守ろうとするタクシー会社の社長が登場してくるけど、この堅気の彼らこそが日本の任侠映画に通ずる清々しさ。
香港の安っぽい嘘と裏切りとの虚飾な裏社会のボスは迫力だけでも鈴木亮平を真似して欲しいと思うほど薄っぺらなのに執念だけは人一倍だったね。

そんな中でもホーは友情と家族愛は絶対に手放さない。命を落とすと解っていても戦火に飛び込んでゆく潔さ!
う〜ん
…くさい!くさい!
なのにどうしてこんなに胸が熱くなるんだろう。
反社を肯定するつもりなどさらさらないけれど暴力で決着をつける生き様に何故か魅入ってしまうんです。
ラスト、弟に華を持たせ自から手錠をかけ連行されるホー。
今時はこんなストレートなノスタルジックな脚本は無いわね…いやぁ、やっぱり最高!
でも、クライマックスを迎えるのはこのシリーズの次作だけどね。

ハードボイルドと呼ばれる暴力的・反道徳的な物語を否定することなくエンターテイメントとして描写するこのシリーズ。
昨今は「ノワール」と呼ぶ方が馴染みが多いのかな。

笑わせてくれるのは叫び係の弟のキットの妻になるジャッキー。
邪魔のところにウロウロ… 彼女がいなかったらもっと不幸は少なかった気がするんだけど…
冒頭のこのジャッキーのチェロで審査を受ける審査員にツイ・ハーク監督が、
ホーが台湾で捕まるときの警察幹部にジョン・ウー監督がカメオ出演していたわ。

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一緒に観てくれたキャサリン子ちゃん。
男臭すぎな映画だったけど大丈夫だったかな?

そして作日4月1日はレスリー・チャンの命日。
亡くなったホテルではこの命日にはたくさん献花がされてます。
好きなのは『さらば、わが愛/覇王別姫』
彼の人生となんとなく被るような気がする名作です。
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