先日観た『椿三十郎』の前作だということで順番逆になりましたが、三船敏郎演じる浪人「桑畑三十郎」が宿場町の悪党どもをやっつける時代劇、爽快でした。
私にはほとんど西部劇にしか見えませんでした。セルジオ・レオーネ監督が『用心棒』を無断でパクって『荒野の用心棒』を作ったのは知っていましたが、「時代劇は西部劇よりカッコ良くてこんなに面白い」と黒澤監督が挑発したようにすら思える、真似したくなるのはわかる気がします。
宿場町の賭場の元締めとヤクザが闘争して町は荒れ、そこにふらりと現れた桑畑三十郎。両者をもっと憎み合わせ殺し合えば片がつき、町に平和がやってくると考え、両者を焚き付けます。
時代劇をここまで面白くダイナミックにできるのは黒澤監督ならではですね。構図が、光の当て方が、見惚れます。こういう写真撮りたいと思いたくなるモノクロの光と影の美。『荒野の用心棒』がパクったのはストーリーだとしてもこの美意識まで模倣できたか気になります。
対決シーンは、もう絵になる。近景には背を向けた悪党が横並び。その先、両脇宿場町の遠近法の消点に三船が立つ。風が吹き荒れ、横から砂ぼこりが舞い立つ。
この仲代達矢はそんなにカッコよくなかった。唯一飛びものを使う。
ラストの藤原釜足の狂気がよかった。
『椿三十郎』より真面目な人物に描かれていました。
黒澤映画は絵がいつまでも印象に残ります。例えば仲代達矢の悪意に満ちた横顔はまるで歌舞伎役者が見得を切ったようにみえます。構図、光と影、美意識の型を感じるのも黒澤作品を観る楽しみの一つです。