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宇宙刑事シャイダー 追跡!しぎしぎ誘拐団のmaverickのレビュー・感想・評価

4.0
『宇宙刑事シャイダー』は、1984年に放送された特撮テレビドラマ。『宇宙刑事ギャバン』、『宇宙刑事シャリバン』に続く「宇宙刑事シリーズ」三部作の第3弾。本作は2作製作された劇場版の内の1本で、東映まんがまつりの一編として上映された。


わずか24分に『宇宙刑事シャイダー』の魅力が詰め込まれている。冒頭からクライマックス。近未来的なデザインが秀逸なブルホークを駆るシャイダーがかっこいい。逆再生を駆使した凝ったアクション。高所での名乗り。わずか1ミリ秒の変身シーン「焼結」。そしてその原理の説明シーン。超次元戦闘母艦バビロスに乗っての戦闘シーン。変形してのバトルフォーメーションと、シューティング・フォーメーション。不思議時空での不思議獣との一対一の戦い。レーザーブレードを抜いた時のテーマ曲。そこからの必殺技「シャイダー・ブルーフラッシュ」の流れ。もはや芸術的な美しさだ。

シャイダーに負けじと、相棒アニーも大活躍。「アニーにおまかせ」と言わんばかりに縦横無尽に駆け回る。JAC出身の森永奈緒美さんの魅力が全開。セクシーなコスチュームも歓喜なのだが、アニーの魅力はむしろ男顔負けな激しいアクションにある。本作でも危険なスタントシーンの数々で度肝を抜く。変身しないのに、ここまで魅せれる存在というのが本当に素晴らしい。

シャイダーを演じるのは、円谷プロダクションの一族出身である円谷浩。ギャバンの大葉さん、シャリバンの渡さんと比べてアクションは控えめだが、それでも今の俳優と比べたらちゃんとアクションしてる。アニーとシャイダーの息のあったコンビネーションは胸躍らせる。

本作の話自体はだいぶ無茶苦茶。突っ込みどころ満載なのは、もはやお約束か。子供をさらって洗脳し、組織の将来を担う人材を育成するというフーマの長期プロジェクトが展開する。回りくどくて何だか笑っちゃうけど、その計画的な行動と理念にはちょっぴり感心する。子役の演技が大根すぎたり、演出がぶっ飛んでて吹き出しちゃうのもご愛敬だ。それでも社会風刺を取り入れてて考えさせられる部分もある。将来偉い人になるべく、親から勉強漬けを強いられている子供を利用する作戦というのが何とも皮肉だ。フーマは人間のこうした部分をつけ狙ってくる。子供には笑い話だろうが、大人が見たら結構笑えない話なんだよね。テレビシリーズもそうだけど、短い尺の中でこういう要素を入れてよく作られているなと感心する。

ゲストの不思議獣の名前はムチムチ。ここも思わず吹き出した。おどろおどろしいデザインは子供には怖いだろうなぁ。人間体の時は老人なんだけど、演じている人が只者じゃない雰囲気を醸し出している。動きもキレがあって、何者かと調べたら石橋雅史さんというアクション畑な方。戦隊ものでも何度も出演があり、『高速戦隊ターボレンジャー』では、敵の幹部の暴魔博士レーダを演じている。あのお方か、と思わず納得した。敵を演じる際には、悪の論理や美学を見せることを意識していたとのこと。それがしっかり伝わってくる。子供向け番組であっても決して手を抜かない。そんな役者魂に感銘を受けた。役者の鑑だね。


30分にも満たない尺の中で、本気の特撮作品を作り上げている。子供向け番組で命がけのアクションを披露しているのだから頭が下がる。高所での名乗りは笑っちゃうくらい高いしね。演出やデザインも洗練されてて美しい。こうした技術の高さは海外からも多大なるリスペクトをされている。今観ても鳥肌立つくらいにかっこいい。宇宙刑事シリーズは偉大だ。
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