てつこてつ

ゴールデンスランバーのてつこてつのレビュー・感想・評価

ゴールデンスランバー(2009年製作の映画)
3.5
先日、せっかく韓国リメイク版を観たので、この日本オリジナル版もレンタル。伊坂幸太郎の原作は未読。

どっちがより面白いとかではなく、同じストーリーでもこうも描かれ方が違ってくるんだ・・というのがリメイク版と比べての感想。

韓国版では、主人公を助けるメインのキャラは一人だったのに対し、こちらは、濱田岳演じる連続通り魔事件の犯人、竹内結子演じる元恋人、柄本明演じる裏稼業に携わっている人物の3名。

話のテンポで言ったら、とにかく大統領暗殺の濡れ衣を着せられた主人公が逃げて逃げて逃げまくるスタイルを取った韓国版のほうが良かったが、逆に139分の上映時間をたっぷり取っているこちらは、それぞれのキャラクターの描き方が丁寧だし、脚本も細かく、最後に怒濤の伏線回収の見事なエンディングが待っている。

作品タイトルでもあるビートルズの「ゴールデンスランバー」の歌詞が意味するところ、韓国版ではちょっと強引さも感じた学生時代のサークル仲間との絆も、こちらでは打ち上げ花火の手伝いのアルバイトのエピソードが描かれていることで、より説得力がある。一人の民間人に対して、そこまで警察組織がやるか?と言った無理な展開もない。

但し、登場キャラクターを必要最低限に絞った韓国版と比較して、途中でダレる部分もあるのも確か。アクションシーン満載であった韓国版に対し、こちらはストーリーテリングで魅せる手法。

韓国版のヒロインよりも出演シーンが多く、より重要な役どころを演じる竹内結子を始め、柄本明、渋川清彦のキャスティングがバッチリと役にハマっている。特に竹内結子は、それほどテンションを上げる訳でもなく、今は人妻であり幼い娘の母親である立場を重々理解しながらも、元恋人の無実を信じて全面的に彼を助けに回るという難しい役回りを、コミカルかつ穏やかで愛情溢れるキャラクターを淡々と巧みに演じていて抜群に良かった。

堺雅人は今も上手い役者さんだけど、この年齢の頃に出演していた「アフター・スクール」や「鍵泥棒のメソッド」、そしてこの作品の主人公のようなキャラクターを演じさせると本当にいい。

ただ、濱田岳自体は上手いんだけど、彼が演じた「びっくりした?」が決まり文句の連続通り魔犯が主人公を助け、政府の陰謀を紐解くという流れだけは、ちょっと違和感。

自分は、韓国リメイク版もこの日本オリジナル版もどちらも好きだが、視聴した順番が韓国リメイク版→本作であったのは正解。逆方向で視聴すると、カン・ドンウォンのファンでないと韓国リメイク版は、オリジナルにある台詞の妙や伏線回収の部分が削除されてしまっているので、若干、物足りなく感じるかもしれない。面白いのは、本作では「人間の最大の武器は信頼だ」と言ってるのに、韓国リメイク版は「誰も信じるな」と全く逆になっている点。

あと、杜の都である全編オール仙台ロケって言うのも、どこか情緒があっていいね。
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