円柱野郎

ゴールデンスランバーの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ゴールデンスランバー(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

無実の罪で警察から追われるというプロットは「逃亡者」のそれだけど、緊張感や切迫感があるのは序盤のみ。
キルオと呼ばれる連続通り魔が主人公を手助けしだしたあたりから、どんどん現実味を伴う緊張感が無くなっていく。
そう、サスペンスと言うよりはファンタジーと言っても良い感じです。

犯人に仕立て上げられたという以外には事件の背景に迫る話がほとんどなく、主人公の人間関係を中心に、“絆”とか“信頼”とか“思い出”とか甘いパーツで話がくみ上げられていくところを見ると、まず話として語りたいところが違うんだなと思う。
それはそれで色々な伏線とその回収との妙がストーリーの変化として上手く組めているとは思うんだけど、偽マンホールにしても下水管花火にしても、話のうまさとは裏腹に地に足ついた現実感には乏しく、どうしても小手先でだまされた様な気になってしまったんだよね。
だからこの話が話として成立するには、ファンタジーとしての色眼鏡を書けないと個人的には納得できないんですわ。

展開は現在と過去の話が入れ替わりつつ描かれて、過去の出来事や思い出が話を進めていくという構造。
そういうのが「アヒルと鴨~」や「重力ピエロ」の伊坂幸太郎っぽい構造だと感じたりもするところではあるか。

人は人との繋がりを持っていることで助けられているというテーマは、ありがちだけど素直に共感できた。
その上で、顔を変えても分かる人には分かる方法で生きていることを知らせるその絆のあり様には感動。
実家への「痴漢は死ね」の使い方は実に上手いユーモアだと感心しました。
円柱野郎

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