ふき

吸血鬼のふきのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1932年製作の映画)
4.0
ジョン・ポリドリ氏の小説『吸血鬼』を原作とする作品。

吸血鬼を扱った初期の映画には、現在の水準でも名作と言える作品が多数あるが、本作もその一つに数えられるだろう。それは、圧倒的な恐怖ゆえにだ。
といっても、凄まじいメイクの吸血鬼が登場するわけでもないし、吸血鬼が凄まじい惨劇を起こすわけでもない。
ではなにが恐怖かというと、映像だ。何でもない景色、なんでもない物体なのに、なぜか不吉さを覚えさせる空気感が、延々と映し出される。
声を上げて怖がれれば発散できるのに、それも許されない。逃げ場のないイヤーーな気持ちを抱かされ続けられる。
凡百のホラー映画には存在しないタイプの恐怖がある。

その効果を最大限に活かすためか、ストーリーは相当わけが分からないことになっている。トーキー映画なのに台詞は断片的だし、情報も全然出てこない。キャラクターの顛末さえ定かではない。「理解しよう」と思って見る人にとっては、頭がクラクラするどころか、怒るレベルだと思う(知人に薦めたら怒られた)。

ただ、その点を超えられる人にとっては、最上級のホラー映画になることもありうる一作だといえる。
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